研究課題/領域番号 |
15K07540
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大越 和加 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20233083)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 養殖貝類 / 穿孔性多毛類 / カキ / 南アフリカ / フィリピン / 生物移動 |
研究実績の概要 |
貝類の貝殻に穿孔するスピオ科多毛類 Polydorids の中には、形態が類似することにより分類が混乱しているグループがあるが、その中で日本から種の記載がなされた1種について、形態学的解析に加え遺伝学的解析を行うことで、synonym であることを明らかにした。その結果については、現在、国際誌に投稿中である。また、逆に、世界に広く分布するコスモポリタン種であるといわれる1種について、南アフリカと日本に生息する個体群を用いて形態のみならず遺伝学的手法を用いて調べたところ、これまで少なくとも4種が含まれることが確認された。本結果についても、現在、論文を準備中である。今回の2つの事例により、Polydorids に含まれる種は今後もリバイジョンが必要であり、一つ一つ種を確定し、その後の生物移動の実態研究を行う必要性が示された。
フィリピンのイロイロ島のカキ養殖場でカキの貝殻穿孔種の調査を実施した。その結果、複数の養殖現場から摘出された Polydorids の種類は1種であることがわかった。海域によっては多くの個体が穿孔しており、ホストの貝類への影響が懸念された。また、天然のカキの貝殻からも同種が摘出され、調べたイロイロ島海域では本種は広く分布していることが推察された。本種は既知種と一致するものはなく、今後、形態学的、遺伝学的、そして生態学的解析を行い、種を明確にする予定である。
これまでの世界での穿孔性多毛類による貝類の被害状況について、総説を国際誌に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東南アジアでの多毛類の情報は少なく、養殖貝類の貝殻に穿孔する Polydorids の報告はほとんどない。そのような中、今回、フィリピンの養殖場で調査を行うことができ、多毛類も採集できたため、今後、知見が増えると予想される。また、今後、韓国、マレーシア、タイの養殖貝類についても、現場で調査する計画が進められている。 南アフリカの貝類養殖場に生息する種との比較については、2種で進められており、順調に成果が出ている。他の種についても今後調査研究が計画されている。 一方、国内の調査については、採集がうまくできずあまり進展が見られなかったが、今後、西の海域を中心に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マレーシア、タイをはじめ、報告の少ない東南アジアの貝類養殖現場での調査が予定されている。それぞれの地域でのコンタクトパーソンとは良好な情報交換ができており、共同研究を行う。 南アフリカ共和国とは、貝類養殖への被害状況、穿孔種等、比較検討する題材がそろい、情報交換も行い、準備が進んでいるので、今後、ますます知見が増えることが期待される。養殖という人為的行為による生物移動の経路についても推察する予定である。 本グループでは分類が混乱しているが、世界各地域から多毛類を採集し、一つ一つ形態のみならず遺伝学的手法をも用いてデータを解析し、種判別を整理し解決する見通しが立ってきた。種が混乱することによる生物移動の実態研究の遅れを少しでも解消することができると考えている。 積極的に国際会議等で成果を公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた調査(韓国、南アフリカ共和国等)が延期になったため、それに伴う旅費と調査費用が次年度へ繰り越しになった。
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次年度使用額の使用計画 |
韓国の調査は次年度、南アフリカ等への調査は今後行うことで調整済みである。
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