研究課題
貝類の増養殖事業に伴い、貝殻をホストとして生息する環形動物多毛類が、国内、国外に非意図的に生きたまま移動することが知られている。貝類への被害が報告され、もっとも広く知られているスピオ科の Polydorids グループの2種については、形態学的な変異の幅が大きいことから、より詳細な形態学的解析と遺伝学的解析を行った結果、1種であることが明らかになった。その結果は国際誌に受理された。同時に、1種だといわれてきたコスモポリタン種については、同様の形態学的、遺伝学的解析を行った結果、複数種であることがわかり、現在国際誌に投稿中である。また、貝類の増養殖が行われている海域の底質にも生息する多毛類のグループについては、今まで普通種といわれてきた種が実は2種であることが判明し、結果を論文化し、受理された。貝類養殖事業に関係する多毛類のグループの生物移動の実態を解明するためには、最も基本となる種の分類についての知見を今後も整理することが求められ、現在進行中である。マレーシアの養殖カキのサンプリングを行い、2種のカキの貝殻に穿孔する複数種のスピオ科多毛類を採集し、現在、形態学的、遺伝学的解析を進めている。また、韓国のホタテガイ養殖の現場から採集した多毛類について調査し、解析を行った。水産業に伴って移動するスピオ科多毛類の分類学的検討について、シンポジウムで基調講演を行った。また、カーデイフ(イギリス)で開催された国際多毛類学会議に参加し、韓国の養殖ホタテガイ貝殻に穿孔する多毛類について最新の知見を発表した。
2: おおむね順調に進展している
東南アジアの貝類養殖場に生息する多毛類についてはこれまで研究がほとんどない中、マレーシアの養殖カキの貝殻に生息するスピオ科多毛類が採集され、現在解析中である。今まで採集されたタイ、フィリピンの種と比較検討することが可能となった。南アフリカの貝類養殖場に生息する種、日本の種については、古いこれまで採集されたサンプルを用いて整理することができたので論文化している。今後は、サンプルを新規に採集し、現況を反映した最新の結果を得る予定である。日本の砂泥底に生息する多毛類の種について、形態的に類似することによりこれまで混同されてきた可能性が示唆され、養殖現場においても検討が進められている。
東南アジア、東アジア、オーストラリア、南アフリカの貝類養殖場の多毛類のサンプルはひととおり目途が立ち、日本のサンプルを含めて形態学的、遺伝学的に解析を進めている。ひとつひとつ種が整理されることにより、実態が見えてくることが期待される。また、それらの解析結果と各現場での被害情報、生息状況等、比較検討しながら生物移動の解明に向かう予定である。一方で、古いサンプルしか入手することができず、遺伝学的解析が不明瞭な種や領域があるため、今後さらに状態の良い新規のサンプルを入手し、解析数を増やして確実に成果を出していく予定である。同時に、貝殻穿孔種のみならず、貝殻の隙間に泥管をつくり生息する種、底質に生息する種についても解析を行っていく予定である。積極的に国際会議等で成果を公表する予定である。
当該年度に予定していた調査(南アフリカ共和国等)が延期になったため、それに伴う旅費と調査費用が繰り越しになった。
南アフリカ等への調査は今後行う予定であり、調整済みである。また結果の公表(印刷等)に使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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