マイワシ太平洋系群・対馬暖流系群、マアジ太平洋系群・対馬暖流系群、マサバ太平洋系群・対馬暖流系群、ゴマサバ太平洋系群・東シナ海系群、スケトウダラ太平洋系群・日本海北部系群の、2003年度以降に実施された資源評価から、資源量推定値の変遷を比較検討し、その信頼性を評価した。H29年度は最新の2016年度評価まで使用したが、H27年度の検討により得られた結果とほぼ同じく、毎年の資源量推定値は変動係数で数%~30%程度の変動があることが示された。資源管理は資源量推定値にこの程度の変動があることを前提として行う必要がある。 上記10系群の中には、毎年資源量推定値が上方修正もしくは下方修正されているものがある。H28年度はこのうちから下方修正が顕著なマサバ対馬暖流系群と、上方修正が顕著なスケトウダラ太平洋系群をとりあげ、資源評価で用いられているデータや仮定等を検討することによりその原因を探った。その結果、前者では特定の年の資源量指標値が、後者では過去の資源量指標値と近年の年齢別漁獲尾数データが影響している可能性が示された。H29年度はさらに詳細に資源評価で用いられているデータや仮定等を調べることで、この原因を検討した。マサバ対馬暖流系群に関しては、2008年頃から漁獲能率が増加し資源量指標値が過大となっていることが原因である可能性が示された。一方、スケトウダラ太平洋系群においては、2011年度評価以前の上方修正は当時使用されていた若齢の資源量指標値の影響が大きい事、2012年度評価以降の上方修正は、資源量指標値と資源量の関数関係の仮定、近年の高齢魚の漁獲尾数の増加、資源量指標値が複雑に絡み合って影響している可能性が示された。資源量推定値がランダムな変動だけではなく、傾向を持って変化する場合は資源管理への影響が大きい。本研究で実施した検討方法は、その原因を探る手段となると考えられる。
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