三陸地方に来遊するサケの母川回帰行動を明らかにするために、岩手県の大槌湾で発信器を装着したサケを放流してその動きを追跡した。その結果、大槌湾河川へ入る場合は南寄りのルートを選択して河川へ遡上することが明らかになった。河川水は湾の南岸寄りに流入していることから、サケは河川の匂いを頼りに遡上河川を探索した結果、南岸からのアプローチになったと考えられる。遡上時の性成熟度はほぼ全個体が最終成熟を迎えているが、成熟途上の個体では湾奥で最終成熟を迎えるまで待っていることが推察された。このように三陸のサケの回帰行動には、成熟度や湾の物理環境の影響があることが示唆された。
|