研究課題/領域番号 |
15K07545
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬渕 浩司 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (50401295)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本在来コイ / 琵琶湖 / バイオロギング |
研究実績の概要 |
本研究は、環境省レッドリストの2007年度版から「絶滅のおそれのある地域個体群」として掲載されている琵琶湖在来のコイについて、その生態学的な特徴を、放流コイ(大陸から導入された「導入コイ」)との比較により明らかにすることを目的とする。琵琶湖に生息するコイは春から夏に沿岸の水草帯で産卵を行う。導入コイは繁殖後も沿岸域にとどまるが、在来コイは繁殖期が終わると広大な沖合に移動するので、この時期にどのような生活をしているのかは全く不明である。そこで本研究では、在来コイと導入コイにデータロガーを取り付けて沖合で放流し、両者のふるまい(日夜の活動パターン、深浅移動、経験水温など)の違いから、在来コイの沖合での生態特性を浮き彫りにする。 解析に用いるコイは、繁殖期に沿岸域で捕獲し、DNAマーカーで在来度(導入コイとの交雑度)を確認する。データロガーは、水深、水温、速度、3軸加速度を記録するものを用いる。放流から数日後に魚体から切り離されるようタイマーを設定し、水面に浮上したものを回収する。放流は非繁殖期の秋と冬に一度ずつ行い、一度の放流では、在来コイ(導入コイとの交雑程度が低いもの)1個体と導入コイ1個体を同時に同じ地点から放つ。一年で4個体、3年で12個体(在来コイ6個体、導入コイ6個体)のデータを得る。 初年度である27年度は、予定通り4個体(在来コイ2個体、導入コイ2個体)のデータを獲得した。データ数はまだ少ないものの、在来コイと導入コイとでは活動水深等に明白な違いが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年の調査では、秋に放流した2個体のうち導入コイ1個体のデータロガーが回収できなかったが、追加でもう1個体の放流を行い、予定通り4個体(在来コイ2個体、導入コイ2個体)のデータを得ることができた。本年は秋冬の放流調査の他に、実際の行動とデータロガー記録との対応をつけるための生け簀での観察実験も行い、ロガーデータを検討する際の参考情報も得た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、秋2個体、冬2個体の放流実験を行い、初年度と同様のデータを蓄積していく。なお、2年目の始めには、遊泳データを解析する際の基礎資料とするため、在来、導入コイの魚体密度の測定も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していたデータロガーを共同研究者から借用することができた。一方、データロガーの回収に手間取り、追加の放流も行ったため、予定より多くの旅費と傭船費がかかった。最終的には両者の相殺により次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
捕獲したものの放流実験に用いなかった初年度のコイについて、体密度を測定し、その後標本として残すことにした。次年度使用額は主として、この作業を現地の畜養施設において行うための旅費・消耗品費として使用する。
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