研究課題/領域番号 |
15K07548
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
神原 淳 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90183334)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | カワハギ類 / 自発摂餌 / 学習 / 食欲対応 / 養殖 |
研究実績の概要 |
本研究申請は追加採用であったため,年度後半からの研究実施であった。このため,研究初年度は,1)大学研究室内の閉鎖循環式水槽でハギ類が健康に飼育可能かどうか,2)オペラント条件付けに基づく自発摂餌をハギ類魚類が学習するかどうか,について検討を行った。 10月末に全長約5cmのウマヅラハギ人工種苗20尾を種苗生産業者から購入し,大学研究室内の100L円形閉鎖循環式水槽(人工海水と天然海水を混合)に収容して飼育した。また、成長良好な個体を用いてオペラント学習による自発摂餌行動について観察した。飼料はマダイ稚魚用EPを給餌した。 屋内の閉鎖循環式水槽においてもウマヅラハギは良く摂餌し,全体的に成長も良好であると判断された。現在も同環境で飼育を継続している。一方,成長が芳しくない個体も一部存在し,その中にはやせて斃死にいたる個体もみられた。餌を十分に摂ることが出来ないことが原因と考えられた。良く成長した個体を約23Lの塩ビ水槽に収容し,これまで他魚種に対し使用してきたプル型スイッチを設置して自発摂餌の学習行動を観察した.ウマヅラハギはスイッチの先に付いた直径3mmのプラスチック球に興味を示し,口で啄むように突っつく行動を行ったがスイッチの起動には至らなかった.これはウマヅラハギの口が極端に小さいこと,口で啄むような摂餌を行うことに対し,スイッチの構造自体が適していないことが原因と考えられた.そこで,スイッチの先を針金状にし,てこの原理を利用して起動させるまでのストロークが小さい改良ロッド型スイッチを考案して自発摂餌に関わるオペラント行動を学習させた結果,ハギ類でもスイッチの形状の工夫を行えば自発摂餌による飼育が可能であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は,カワハギ類に適した自発摂餌センサーの開発と屋内実験室での単独自発摂餌飼育により,光周期と摂餌パターンを明らかにすることを計画した.本研究申請は追加採用であったため,年度後半から準備をし,飼育実験を行った。屋内実験室における閉鎖循環式飼育水槽を用いる場合でもウマヅラハギを十分に健康な状態で飼育することができることがわかったものの,光周期と自発摂餌パターンの関係を明らかにするまでには至らなかった.一方,カワハギ類に適した自発摂餌センサー開発については,てこの原理を利用して微妙なついばみ行動を増幅して感知できるような構造的工夫を行ったスイッチを考案し,カワハギ類の自発摂餌飼育において実際に有効であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
屋内研究室における閉鎖循環式飼育水槽を用いる場合でもウマヅラハギを十分に健康な状態で飼育することができることがわかった.また,カワハギ類用に構造的工夫を行ったセンサーを用いれば自発摂餌飼育が可能であることも明らかとなった.今後は,この自発摂餌飼育システムを用いて,屋内水槽での単独飼育および集団飼育を実施し,光周期と自発摂餌パターンの関係性や,成長成績について検証し,カワハギ類への自発摂餌飼育法の有効性について調べてゆく.また,最終的には実際の養殖を前提に,海面生け簀での自発摂餌飼育を目標とするが,屋内実験で使用する改良ロッド型スイッチは海面での使用は不可能であるため,風波や生け簀の揺れに対して誤動作をしないハギ類用光ファイバー型センサ-を開発し,ウマヅラハギへの適用性について検討する.また,生け簀での自発摂餌飼育が可能となれば,屋内の人工照明下でなく,自然光環境下での光周期と摂餌パターンの関係や季節的な水温変化が摂餌パターンに与える影響も調べることができるので,これを推進する.
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