研究課題/領域番号 |
15K07548
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
神原 淳 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (90183334)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ハギ類 / 養殖 / 自発摂餌 / 学習 / 食欲対応 |
研究実績の概要 |
ウマヅラハギの口は極端に小さく、さらに、口で餌生物を啄むような摂餌行動を持つことから、これまで多くの自発摂餌研究に使用されてきたプル型スイッチは適用できない。このため、スイッチの先を針金状にし、かつ、梃子の原理を利用して起動までのストロークが小さい改変ロッド型スイッチを考案して、集団および個別に自発摂餌飼育を行なった結果、ウマヅラハギはオペラント行動を学習し、自発摂餌による飼育が可能であること、自発摂餌の確認された全ての集団および個体で光周期がLD12:12条件下での摂餌活動は明期摂餌型であること、加えて、薄明期の高い摂餌活性と明期全般に亘る継続的な摂餌活動がパターン的特徴であること、また、摂餌の周期は光周期と完全に同調していることなどが明らかとなっている。一方、実験に使用した高感度のウマヅラハギ用ロッド型スイッチは、室内の実験水槽では使用可能であるものの、海面生け簀では風波や生け簀の揺れにより誤動作を起こし、その使用は不可能である。そこで、生け簀でのウマヅラハギ養殖への自発摂餌の適用を目指して、回帰反射型の光ファイバーとアンプを用いてウマヅラハギ自発摂餌飼育用の光ファイバセンサーを開発した。口の小さなウマヅラハギでもその先端を突っつき易いように先端をテーパー状に細くしたL字型ガラス管に光ファイバーを挿入したものである。このガラス管を塩ビ管に取り付けて自発摂餌スイッチとした。感度は専用アンプの閾値を調節することにより調節できる。これを集団および個体での自発摂餌実験に使用した結果、ウマヅラハギは、これまでと同様にオペラント条件付けによる自発摂餌行動を学習した。また、すべての集団および個体で光周期がLD12:12条件下での摂餌活動は明期摂餌型であること、加えて、薄明期の高い摂餌活性と明期全般に亘る継続的な摂餌活動がパターン的特徴であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、ハギ類の自発摂餌実験には、梃子の原理を利用して感度を高めた実験室用自発摂餌スイッチを用いてきたが、ウマヅラハギ養殖に自発摂餌式給餌法を適用する場合には、風波や生け簀自体の揺れによって、誤動作を起こす機械式スイッチは使用できない。本研究の最終的な到達点は、自発摂餌式給餌法を現場生け簀でのウマヅラハギ養殖に適用し、これによって効率的な養殖を実現することを目標とするため、海上生け簀で誤動作が回避できる自発摂餌スイッチの開発は必然である。そこで、風波や揺れの影響を受けない光による摂餌活動のセンシングを可能にするファイバーセンサーを用いたウマヅラハギ用自発摂餌スイッチの開発を行った。ウマヅラハギの口が小さいこと、並びに啄みを基本とする摂餌特性に対応するために、先端をテーパー状に細くし閉じたガラス管に光ファイバーを埋め込んだ。また、ウマヅラハギが啄みやすいようにガラス管をL字型に曲げることにより、ウマヅラハギが水平の動きのみで啄めるような工夫も行った。このファイバーセンサーを用いて、自発摂餌飼育を行った結果、これまでのロッド型の機械式スイッチを使用した場合と同様に、ウマヅラハギはオペラント条件付けによる学習を行い、自発摂餌により飼育することが可能であった。また、ウマヅラハギは、光ファイバセンサーを用いた場合でもロッド型の機械式スイッチと同様に、明期全般に亘る摂餌活動を行うこと、明期開始直後に高頻度の摂餌活動が観察されるパターンや明期全般にわたり均等に摂餌するパターンがあることも明らかとなった。以上の結果から、本年度の研究で、光ファイバーセンサーをウマヅラハギ養殖生け簀で使用する目処が立ち、研究計画に照らして、研究の進捗は順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ウマヅラハギが光ファイバーセンサーをスイッチとした自発摂餌を学習できることが明らかとなり、さらにその摂餌パターンは、これまでの機械式の高感度ロッド型スイッチを使用した場合と同様であったため、本年度は、この光ファイバーセンサーを用いて、実験室内水槽での更なる知見を蓄積するとと共に、生け簀におけるウマヅラハギの自発摂餌飼育を試みる。300尾程度を収容したウマヅラハギ生け簀に、自発摂餌システム一式を装備し、周年飼育を目指す。生け簀での自発摂餌飼育のため、自発摂餌システムは,バッテリー駆動とし、バッテリーを充電するためのソーラーパネルも装備する。給餌機起動時刻はデータロガーにより記録する。また、外部環境要因として水温と照度を同様にデータロガーを用いて連続記録し、ウマヅラハギ自発摂餌の摂餌活動頻度と水温や照度との日周的関係、季節的関係を把握する。また、自発摂餌飼育試験区と並行的に自動給餌飼育試験区も設け、定期的な体重測定を実施する事により、成長率、飼料転換効率等を指標にして成長についても比較する。
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