研究課題/領域番号 |
15K07549
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
淀 太我 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00378324)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 炭素・窒素安定同位体比分析 / 河川性魚類 / 食物網 / 消化管内容物 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に則り,三重県津市を流れる安濃川の3定点で原則として年4回の魚類採集(5,8,11,2月)と6回の環境生物採集(4,6,8,10,12,2月)を行った。ただし,1地点では河川工事のため6月の調査を行えなかった。なお,魚類調査時に甲殻類等,環境生物調査時に魚類が採集された場合には,サンプルの収集状況に応じて適宜サンプルに加えた。その結果,陸上植物14試料,水生植物63試料(分割保存を含む),魚類767試料,その他水生動物445試料を得た。また,計画において予備的フィールドに設定した中ノ川においても,4定点を設け魚類と環境生物を年4回採集し,陸上植物(リター含む)31試料,水生植物15試料,懸濁態有機物(POM)16試料,魚類326試料,その他の水生動物254試料を得た。このうち,安濃川の陸上植物12試料,水生植物38試料,魚類80試料,その他水生動物122試料と中ノ川の全試料の計894試料について炭素・窒素安定同位体比分析を行った。その結果,多くのケースで懸濁態有機物はリターと付着藻類を結ぶ線上に位置し,両者の混合物であると考えられた。また,多くのケースで魚類がδ13Cとδ15Nがともに他の生物群よりも高く,環境中での高次捕食者としての地位を占めていると考えられ,特にオオクチバスやニホンウナギ,ナマズ等の肉食魚はより高いδ15Nを示したが,雑食性魚類は地点や季節を通して種ごとに共通の傾向は示さなかった。中ノ川については魚類の消化管内容物分析も行ったところ,雑食魚はユスリカ科幼虫と付着藻類が地点・季節を通して優占し共通の主餌料と考えられた。また,雑食魚はごく一部の種を除き,夏季に植物性餌料の比率が上昇する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備的フィールドとして設定した中ノ川の状況把握を優先したため,安濃川の解析に遅延が生じている。これは,両河川の付着藻類の窒素同位体比が異常な数値を示し,その原因の解明と解決方策の模索を予備的フィールドのサンプルを用いて実施したためである。また,当初予定よりも多種多様な生物が採集され,分析に時間を要していること,共同利用の分析機器の混雑等による分析遅延も要因の一つである。試料の採集についてはほぼ滞りなく行えているため,今後順次分析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の分析結果を受けて平成28年度以降の主対象魚種を選定する計画であったが,上述の通り安濃川の解析が遅延しているため,平成28年度前半は採集済み試料の分析に注力し,後半から平成29年度前半にかけて主対象魚種の調査を行うよう調整する。当初計画では,平成29年度は競合種の共存しない地点について年度前半にのみ調査を行うこととしており,これは平成28年度調査と同時に行えるため,最終的な計画の遂行には大きな問題は無いと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同利用機器を利用した安定同位体比分析について,分析に必要な消耗品類は,分析点数に応じて年度末に一括購入することとなっていたが,その発注と納品が平成27年度中に間に合わなかったことが理由であり,それで次年度使用額はほぼ無くなる予定である。既に発注は行われており,納品を待って速やかに使用される。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の計画通りに支出が発生したが,その支払が遅延している状況なので,前年度分を速やかに支払った後は,特に平成28年度の使用計画に変更は無い。
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