昨年度までの期間において,機器不調等により分析の終了していなかった,三重県津市を流れる安濃川の中流域3地点において採集した環境生物および魚類サンプルについて,炭素および窒素の安定同位体比を分析するとともに,消化管内容物についても解析を行った。分析に供したサンプルは前年度までの分析個体をあわせ,魚類415試料と,水生無脊椎動物348試料,リター35試料,水生植物44試料である。昨年度の分析において,これら3地点の食物網構造は,各々河川内生産有機物に強く依存するグループと,河川外生産有機物に強く依存するグループが存在し,複雑な構造を示していた。これに今年度分析した試料を追加して再解析を行った。なお,本研究においては,3地点ともにサーバーネットによる河川流下物採集によって陸生の消費者(昆虫類等)の採集を試みたが,いずれも分析可能なほどの量が採集されず,分析に供していない。それらの陸生消費者のデータの欠落が解析に悪影響を与えているものと考え,リターの値から炭素・窒素の濃縮係数の一般値(δ13C,1‰;δ15N,3.4‰)を用いて陸生の一次消費者,二次消費者の値を算出し,仮想データとして混合モデルに投入した。その結果,解析結果は昨年度から大きく変化することはなく,昨年度までの解釈がより強く支持された。すなわち,当該河川において個体モザイクによる資源分割は認められず,一方で,底生性か遊泳性かによって魚類の河川外生産有機物への依存度が大きく異なり,これは水面落下陸生昆虫への捕食度によるものと考えられた。これらの成果について,国内学会において1件の発表を行った。
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