研究課題/領域番号 |
15K07550
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中山 耕至 京都大学, 農学研究科, 助教 (50324661)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 個体群構造 |
研究実績の概要 |
水産対象種において,種内での地域個体群への分化の有無や各個体群の地理的分布,すなわち個体群構造を明らかにすることは,資源管理や増殖施策を考える上で不可欠である.しかし,数多い水産対象種の全てについて個体群構造を解明することは難しく,これまでに研究が進んでいる魚種は多くない.本研究では,各魚種の生活史特性から間接的に個体群の分化レベルを推定することが可能かどうか調べることを目的とし,韓国―西日本の沿岸および内湾性海域を対象として,生活史特性の異なる近縁種間において個体群分化レベルの比較を行っている. 本年度は前年度に引き続き分析用試料収集と遺伝分析を進めた.タイ科(クロダイ・ヘダイ・マダイ・キダイ),ニシン科(キビナゴ・ウルメイワシ),カワハギ科(カワハギ・ウマヅラハギ・アミメハギ),カレイ科(マコガレイ・ヒレグロ),アイナメ科(アイナメ,クジメ,ホッケ),ハゼ科(マハゼ・ハゼクチ)について玄界灘,若狭湾,瀬戸内海周辺および韓国から試料を収集してミトコンドリアDNA調節領域塩基配列を調べたところ,沈性卵を産む魚種では,種内に2つの分化したクレードがある傾向がみられた.ただし,ホッケでは種内に多型がほとんど無いことが判明した.マハゼおよびハゼクチについては,新規に単離したマイクロサテライトDNAの11座位を用いた分析も行い,有明海において種間交雑が生じていることを見出した.コノシロについては,ミトコンドリアDNAでは深く分化した2つのクレードが認められていたが,それらは韓国の東岸・南岸の混在域では生殖的隔離がなく混合していることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
天候不良や漁獲不調等により分析用標本の個体数または地点数が十分でない対象種がいくつか残っているため,採集地点を変更するなどして必要数の確保を急ぐ.収集済みの試料の遺伝的分析は順調に進捗している.
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度には,試料数および採集地点数が十分ではない対象魚種について再度収集を行い,順次ミトコンドリアDNAの塩基配列分析を進める.各魚種についての分析結果の公表準備を行うとともに,これまでの結果を総合し,生活史特性と個体群分化レベルとの関係を調べる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:天候不良や漁獲不調等により分析用標本の収集数が予定よりやや遅れているため,試料の遺伝的分析に必要な試薬等の購入が計画より少なくなった.
使用計画:再度分析用標本の収集を試み,入手できた試料については速やかに遺伝的分析を行う.
|