養殖アコヤガイの軟体部の赤変化を伴う斃死、いわゆる赤変病は1994年に愛媛県で最初に確認されて以来、 1996年から1998年の3年間で西日本の主要な真珠養殖漁場全域に一気に広がり壊滅的な被害をもたらした。現在は低水温飼育による発症抑制などの対処療法により、被害をある程度抑制することが可能となったが、赤変病によるアコヤガイの斃死は毎年発生し、被害を与え続けている。本疾病の病原体は未だ明らかになっておらず、発症機構は不明のままである。そこで本課題ではタンパク質を網羅的に解析する手法であるプロテオーム解析により、病原体由来のタンパク質、または感染・発症後に存在量が変動するアコヤガイ由来のタンパク質群を探索・同定し、発症機構を推定すること、さらには感染の早期発見のための分子指標の開発を目指している。 これまでにアコヤガイの閉殻筋より抽出したタンパク質を二次元電気泳動に供して染色後、検出されたタンパク質スポットについて、病貝で変動しているタンパク質を中心に同定解析を進めている。H27年度はMALDI-TOF-MSを中心としたPMF解析により、H28年度はLCMS-IT-TOFを中心としたMS/MS解析を中心にタンパク質の同定解析を実施し、アコヤガイのプロテオームマップを作製中である。また、アコヤガイの血リンパにも感染力があるため、並行して研究協力者のミキモト真珠研究所から病貝および健常貝の血リンパを供与頂き、両サンプルのタンパク質発現量の差異を引き続き解析し、H29年度および科研支給期間終了の現時点においても引き続き発病機構の解析を行っている。
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