研究実績の概要 |
本研究では、エビ類において細胞増殖や細胞・組織等の活性化を制御するサイトカインとホルモンとのクロストークに着目し、疾病防除を目的として、従来の免疫機構の解明に加えて、性成熟や脱皮などのエビ類特有の内分泌機構から見た新たなトランスレーショナルリサーチを目指す。 昨年度までで明らかとなったインスリン様成長因子群や窒息ストレス負荷時に発現するhypoxia inducible Factor-1 遺伝子 (MjHIF-1α, β)とその関連遺伝子(MjVHL, MjFIH-1)、およびglucose transporter遺伝子 (MjGLUT)が明らかとなり、さらに今年度は脱皮に関連するアポトーシスに関わる細胞チェックポイント関連遺伝子を明らかにした。その結果、MjHIF-1αとMjVHLは腸管に高い発現を示した。MjHIF-1α、βのin situ hybridizationの結果、エビの腸管の上皮細胞に発現が見られた。窒息条件下のエビの血液中の乳酸量は、12時間後に有意に高くなった。同時に腸管内におけるMjHIF-1αが有意に高く発現した。MjFIH-1とMjVHLのsiRNAを作製してエビに注射したところ、遺伝子のノックダウンに成功した。しかし、dsRNAを用いた場合は、ノックダウン効果は見られなかった。アポトーシスに関わる細胞チェックポイント関連遺伝子については、5種類の遺伝子を解析して、同定した。H2O2添加海水にエビを暴露したところ、鰓細胞にアポトーシスを確認するとともに、MjChk1、Mjp53、MjPP2A遺伝子の発現が有意に上昇した。dsRNAによってMjATMをノックダウンすることができた。 このように、基盤的知見は得られたので、現場でのエビの健康状態の把握とこれらの遺伝子発現の相関を検討して、疾病の早期発見につなげる必要がある。
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