研究課題/領域番号 |
15K07557
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
大城 香 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 名誉教授 (90101104)
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研究分担者 |
兼崎 友 東京農業大学, 応用生物科学部, 研究員 (70380293)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | スイゼンジノリ / Aphanothece sucrum / シアノバクテリア / 細胞外多糖 / Exopolysaccharides / 細胞外多糖生産 |
研究実績の概要 |
独自に確立したスイゼンジノリ野生株および緑色変異株を用い、 (1)両株を用い生理特性と生産された細胞外多糖(EPS)物性の検討を行い、(a)貧栄養的性質を持ち、通常の淡水産微細藻類培地に含まれるレベルの栄養塩(P,N,Fe、微量金属)が生育を阻害する、(b)増殖速度(クロロフィル増加量)、生物生産量(乾重量)ともに低温(20℃)低照度(40~80μ㏖・m2・sec-1)で高くなり、高温(30℃)では顕著な生育阻害が見られる、(c)EPS含量はいずれの条件でも40~60%(乾燥重量当たり)である、(d)合成されたEPSは、分子量約107Da、グルコース・キシロース・ラムノース・ガラクトース・マンノース・フコースで構成され、ウロン酸を含む酸性糖であることを示した。 (2)野生株を用い、イオンビーム照射条件を決定するための予備実験として異なった線量のX線照射を行い、致死率から照射線量を決定した。EPS変異体のスクリーニングに適するマイクロタイタープレートを用いた方法を開発、最適細胞密度等の条件検討を行った。 (3)ラン藻の核酸抽出で用いられている手法を検討、DNA、mRNAの抽出効率・安定度ともに凍結破砕法が最も適していることを明らかにした。 (4)シーケンサーPacBioを用いて得られた両株の塩基配列情報をアセンブルし、最終的にそれぞれ20本、95本のコンティグ配列を得た。これらの配列の遺伝子領域と遺伝子機能の注釈付けを実施した。EPS合成関連遺伝子の検索を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載の(1)細胞外多糖(EPS)生産条件検討、(2)イオンビーム照射実施のための予備実験、(3)核酸抽出法検討、(4)遺伝子解析ともにほぼ実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)細胞外多糖(EPS)合成・放出を保有する他の分離株も用い、培地の塩・栄養塩等が及ぼす影響をさらに詳細調べ、生理・生化学的特性解明を進める。 (2)イオンビーム照射とEPS関連突然変異体のスクリーニングを行う。 (3)本種に適したトランスクリプトーム解析法を検討、(1)(2)で得られた異なる量のEPSを生産する細胞を用いて解析を行う。 (4)(2)で得られた変異体を用いたEPS関連遺伝子の比較解析を行う。
新規課題として、本研究結果(1)を反映させた分離株による大量養殖法開発を行う。「平成28年熊本地震」により熊本県唯一の養殖場が壊滅的被害を受け、熊本県産スイゼンジノリが絶滅する可能性が出てきた。申請者の分離株の一部は熊本県で養殖されていたスイゼンジノリ由来なので、本研究で得られた結果を還元することが目的である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)実験補助を必要としなかったため、人件費が残った。 (2)旅費(国際)が当初計画より少なくて済んだ。
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次年度使用額の使用計画 |
実験補助の人件費、旅費、多糖構造解析依頼などに充当予定。
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