研究課題/領域番号 |
15K07561
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
泉 庄太郎 東海大学, 海洋学部, 准教授 (90450379)
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研究分担者 |
新井 肇 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (60450384)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 冷水病 / 血清型 / 疫学調査 |
研究実績の概要 |
小課題「血清型決定遺伝子群の遺伝子構造解析」においては,冷水病原因菌Flavobacterium psychrophilumのLPSコアの生合成に関わる酵素タンパクであるLpsA,およびLPS糖鎖の生合成に関わると推察される酵素タンパクであるWzxEをコードする遺伝子領域にPCRプライマーを設計し,それらの一部と思われる領域の特異的PCR増幅に成功した。また,血清型が異なる複数の菌株において,LpsAおよびWzxEと思われる遺伝子領域の塩基配列を決定し,菌株間に塩基配列の変異があることを確認した。さらに,この塩基配列の変異と血清型を比較し解析を行ったが,各血清型と相関する特徴的な塩基配列の変異等は見られなかった。 小課題「冷水病発生河川における感染環を解明する疫学調査」においては,予定した調査河川である群馬県神流川の各管轄漁協の放流実績と放流後の魚類生息状況や河川環境について,聞き取り調査や現地における河川調査を行った。さらに,同河川において試験採捕した16魚種から冷水病原因菌の分離を試みたところ,合計69株の冷水病原因菌株の分離培養に成功し,これらを-80℃のグリセロールストックに保存しコレクション化した。また,これらの冷水病原因菌の菌株コレクションを既報のPCR-RFLPによる冷水病原因菌遺伝子型タイピング法で型別したところ,複数の遺伝子型が見出され,同河川における冷水病流行が複数の感染源から構成される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小課題「血清型決定遺伝子群の遺伝子構造解析」においては,冷水病原因菌の血清型の決定に関与していると推察される複数のLPS合成関連遺伝子のPCR増幅と塩基配列解析に成功したが,現在のところこれらの塩基配列の変異と血清型との間に有意な関連を見出すには至っていない。 小課題「冷水病発生河川における感染環を解明する疫学調査」においては,調査河川である群馬県神流川で冷水病が発生したことから,当初の予想を上回るペースで冷水病原因菌株の収集ができており,また,当該河川管轄漁協からの聞き取り調査も順調に進捗している。これらは小課題担当機関である群馬県水産試験場が長年培ってきた魚病研究および河川調査におけるノウハウが活用された結果であると考える。収集した冷水病原因菌株の由来魚種は多魚種にわたっており,また収集菌株分離時期や分離水域も十分に広いことから,収集菌株のコレクション化が今後の研究の進展に寄与するものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
小課題「血清型決定遺伝子群の遺伝子構造解析」においては,LpsAおよびWzxE以外のLPS関連タンパクの遺伝子領域を探索すると同時に,これらのLPS関連遺伝子群を含めた血清型関連遺伝子群の構造解析も実施し,冷水病原因菌の血清型を決定している遺伝子配列や塩基配列の変異等を明らかにしていく。さらに,その結果を受けて,今年度(平成28年度)よりはじまる小課題「血清型別の技術的改良と宿主特異性の確認」において,分子生物学的手法を用いた血清型別法の開発にも着手する。 小課題「冷水病発生河川における感染環を解明する疫学調査」においては,前年度と同様に聞き取り調査と河川で冷水病を発症した魚類等からの冷水病原因菌の収集を行い,菌株のコレクションを増やしていく。さらに,小課題「血清型別の技術的改良と宿主特異性の確認」で新しい血清型別法が開発され次第,試験的にこれらの菌株コレクションにおいても血清型によるタイピングを実施し,最終年度(平成29年度)の成果につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は,小課題「冷水病発生河川における感染環を解明する疫学調査」の実施において生じたものである。本小課題における聞き取り調査や冷水病原因菌の菌株収集は順調に進捗したが,その後の遺伝子型タイピング等の分析等が一部残っていることが次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度(平成27年度)コレクション化した収集菌株の分析等を優先的に実施し,今年度(平成28年度)の研究は予定どおり推進して全体の成果に結びつける予定である。生じた繰越額による今年度分予算の計画的な執行への影響はない。
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