小課題「血清型決定遺伝子群の遺伝子構造解析」においては,血清型の決定に関与している遺伝子領域の候補をFlippase遺伝子とその上流の13遺伝子座とし,全ゲノム配列が既報の冷水病原因菌CSF259-93株の当該領域約14000 bpのデータを基にして20個のプライマーを設計した。これらのプライマーによる網羅的PCRによって候補領域のシンテニー,欠損や挿入等の変異を確認し,必要に応じて変異部位の塩基配列を決定した。 その結果,血清型不明のテンチ由来株において,ピロリン酸キナーゼ遺伝子領域を含むPCRで他株より約1200 bp長いPCR産物が確認され,この領域の塩基配列を決定したところ,ピロリン酸キナーゼ遺伝子下流にトランスポザーゼ遺伝子を含む塩基の挿入変異が見られた。しかし,この変異は各血清型に特徴的なものとはいえないことから,小課題「血清型別の技術的改良と宿主特異性の確認」においては目立った進捗を得られなかった。 小課題「冷水病発生河川における感染環を解明する疫学調査」においては,調査河川である群馬県神流川の各管轄漁協の放流実績と放流後の魚類生息状況や河川環境について聞き取り調査と現地の河川調査を行った。河川で試験採捕した16魚種から冷水病原因菌の分離を試みたところ,3か年で357株の冷水病原因菌株の分離培養に成功し,これらを-80℃のグリセロールストックに保存しコレクション化した。また,これらの冷水病原因菌の菌株コレクションを既報のPCR-RFLPによる冷水病原因菌遺伝子型タイピング法で型別したところ,複数の遺伝子型が検出され,同河川における冷水病の流行が複数の感染源から構成される可能性が示唆された。さらに、3か年連続で出現頻度の高い遺伝子型を確認し,神流川における冷水病の流行型が判明した。
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