研究課題/領域番号 |
15K07562
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
松原 創 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (50459715)
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研究分担者 |
渡邉 研一 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (20426315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 魚類麻酔 / 炭酸ガス麻酔 / 化学的麻酔 / 物理的麻酔 / 回遊魚 / 淡水魚 / 海水魚 / ストレスフリー |
研究実績の概要 |
魚類生産および実験において、麻酔は、投ワクチン・投薬・標識装着・測定・手術・安楽死などで不可欠である。最近、研究代表者らは、食の安全性を十分に確保すると共に、使用しやすく、かつ低コストの魚類麻酔として、入浴剤に類似した小型タブレット型炭酸ガス発泡剤を開発した。それは、ゲノム情報があきらかとなっている魚種(淡水魚ではティラピア・イトヨ・ゼブラフィッシュ・プラティ・メダカ、海産魚ではトラフグ)などに麻酔効果を示し、麻酔に罹る時間など薬理作用、各種水温の適合性・覚醒するまでの時間など生理作用において、承認麻酔薬より優れていた。さらに斃死は認められなかった。そこで本研究では、機能性遺伝子間の相同性がやや高いティラピアとトラフグに焦点をあて、炭酸ガスひいては既知の化学的および物理的麻酔が、組織・器官に影響を与える原因となるストレス機構にどのような影響をおよぼすかを調査し、魚類における最適な麻酔を探索すること、ひいて麻酔が脳の活動およびニューロンにおよぼす影響を分子レベルで探索することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の初年度である平成2 7年度は、化学的麻酔(オイゲノール・炭酸ガス)を用いて、淡水で産卵する大型遡河回遊魚であるシロザケおよび海水で産卵する両側回遊魚であるヌマガレイの麻酔が罹る条件について調べた。その結果、体サイズが大きくなるほど麻酔に罹りにくいことがわかった。興味深いことに、シロザケでは海水より淡水、ヌマガレイでは淡水より海水のほうが麻酔に罹りやすかった。そして、炭酸ガスのみ斃死が認められなかった。また、トラフグヒートショックプロテイン(HSP)のリアルタイム定量PCR系を確立した。くわえて、先行試験を行った魚類も追試を行い、採血し、現在、血中グルコースおよびL-乳酸濃度を測定中である。以上の結果から、炭酸ガス麻酔は、さまざまな魚類で体サイズおよび温度依存で作用を示し、淡水由来と海水由来で麻酔に罹る条件が異なる可能性が示唆された。しかし、トラフグヒートショックプロテイン(HSP)のリアルタイム定量PCR系の確立に時間がかかり、当初計画していたそれら特異抗体の作製を行なうことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒートショックプロテイン(HSP)各種の特異抗体を作製する。また、血中グルコースおよびL-乳酸濃度を測定する。さらに、平成28年度の計画である既存のトラフグストレスマーカー因子抗体がティラピアでも交叉するか否かを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度、使用予定であった液体窒素購入経費が16,246円、次年度使用へと繰り越しとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用となった16,246円、液体窒素購入済みである。したがって、使用計画は、変更なく、進行予定である。
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