研究課題
水産養殖や水産動物実験の現場では、麻酔剤が、ワクチン接種、標識装着、測定、手術、安楽死など様々な局面で、人と魚の安全のためにもちいられる。これまで研究代表者らは、食の安全を考慮した小型かつ低コストの魚類麻酔として炭酸塩と有機酸からなる小型タブレット型炭酸ガス発泡剤を開発した。そして、それが、ゲノム情報があきらかになっている魚類(淡水魚ではティラピア、ニホンイトヨ、ゼブラフィッシュ、プラティ、メダカ、海水魚ではトラフグ)などで麻酔作用を示すことを確認し、研究代表者が関与するさまざまな実験で麻酔としてもちいた。これまでの本研究では、淡水産卵回遊魚(ニジマス、ギンザケ、ウグイ)は淡水で、海水産卵魚類(メナダ)は海水で麻酔に懸りやすいことを見いだした。本研究の最終年度にあたる平成29年度は、近年ゲノム情報があきらかになったスポッテッドガーに小型タブレット型炭酸ガス発泡剤の効果を調べたところ、水産用医薬品の麻酔剤として承認されているオイゲノールを主成分とするFA100と同様に麻酔作用を示した。また、小型タブレット型炭酸ガス発泡剤およびFA100麻酔にともなうストレス因子(ラクトースとグルコース)の動態をゲノム情報があきらかとなっている20℃飼育の淡水魚ティラピアと海水魚トラフグで比較した。その結果、小型タブレット型炭酸ガス発泡剤をもちいて短時間で麻酔に懸ったティラピアおよびトラフグの血中ラクトースとグルコース量はFA100のそれより低値を示した。これらの結果を総合すると、小型タブレット型炭酸ガス発泡剤はFA100より苦痛を軽減している可能性が示唆された。現在、ヒートショックプロテインなど他のストレス因子発現におよぼす小型タブレット型炭酸ガス発泡剤の影響を調べている。この結果が得られてから、論文として国際誌に投稿する予定である。
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Theriogenology
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