研究課題/領域番号 |
15K07565
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
伊東 尚史 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, グループ長 (70372050)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミジンコ / CyHV-2 / CyHV-3 / VHSV / ウイルス動態 |
研究実績の概要 |
モデル動物プランクトンとしてミジンコを用い、魚類病原ウイルスが動物プランクトンの体内に感染性を保持したまま存在するかどうかを調べた。年度計画通りミジンコに対するcyprinid herpesvirus-2 (CyHV-2)及びcyprinid herpesvirus-3 (CyHV-3)の暴露実験を行い、それらのウイルスがミジンコ体内に感染性を有した状態で保持されるかどうか検討した。その結果、試験した最も高いウイルス濃度である10の3乗 TCID50/mL区でも浸漬した1~3日間を通し、いずれのウイルスも分離されなかった。したがって、CyHV-2及びCyHV-3は10の3乗 TCID50/mL程度ではミジンコ体内に残存しない可能性が推察された。一方でこれらのウイルスの分離に用いている魚類株化細胞の感度の低さが本結果を導いた要因である可能性も危惧された。 昨年度の継続として、10の8乗 TCID50/mLのウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)に暴露されたミジンコ体内のウイルス力価の変動を調べた結果、およそ10の3~4乗 TCID50/mLの VHSVを3日間は保持していることが示された。そこで、次年度計画を前倒しし、10の3 乗TCID50/mL程度の VHSVを保持しているミジンコをニジマスに2週間摂餌させ、さらに2週間飼育しVHSの発症の有無を観察したが、VHSは発症しなかった。発症に至らなかった要因を調べるため、ニジマス消化内容物のVHSVへの影響を調べた結果、VHSVはニジマス幽門垂の抽出液中では15℃で4時間後には10の4乗 TCID50/mL以上減少することが示された。これより10の3 乗程度の VHSVを保持しているミジンコをニジマスが摂餌しても、その消化過程でVHSVが不活化され感染には至らないのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、ミジンコに対するCyHV-2及びCyHV-3の人為的暴露実験を行うと共に、計画の一部は前倒し、ニジマスへのVHSVを含むミジンコの投与試験を行い、さらにニジマス消化内容物のVHSVへの影響を調べたことからおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
CyHV-2及びCyHV-3の分離に用いている魚類株化細胞の検出感度の低いことが危惧されることから、当初の予定通りCyHV-2及びCyHV-3に人為的暴露したミジンコをCyHV-2ではキンギョ、CyHV-3ではコイに摂餌させ、キンギョではキンギョヘルペスウイルス病が、コイではコイヘルペスウイルス病が実際に発症するかどうか調べる。
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