チョウザメは、キャビアとなる魚卵が採れるまでには最低でもふ化後8年以上かかり、他の養殖魚に比べても飼育期間が非常に長い。また、魚卵の価値が高いために、メスは、オスの20倍以上の価格差があるが、オスはほとんど価値がない。そこで、メスのみを育てたいが、形態からの雌雄判別は困難で、確実に判別できるまでには最低でも3年以上かかる。本研究では、チョウザメについて、あくまで機能的な性の違いを出来るだけ早い段階で、誰でも、簡単、迅速に、安価に鑑定できる技術開発を行うことを目的とした。 これまで、ベステル種およびアムール種について、当歳魚の時点から、1カ月ごとに体重、体長、生残率を測定すると同時に、一部の個体にナンバーリングし、血液採取を行った。生化学マーカーの定量を行ったところ、ビテロジェニン濃度に個体差が見られたが、飼育途中で死亡あるいは生育不良になる個体が続出したため、今回用いたサンプリング方法は、魚体に負担が大きいことがわかった。成育過程の生化学マーカーを把握するためには、魚体に負担のかからないサンプリング方法の開発が必要である。 また、ベステル種の1歳魚、2歳魚、雌雄判明した3歳魚についても、血液、尿を採取した。採取した試料は、エストロゲン類(エストラジオール、エストリオール、エストロン)等の生化学マーカーの定量を行い、雌雄の差とホルモン濃度について検討を進めた。その結果、開腹して生殖腺の形態から雌雄が明らかでも、測定値には幅があり、雌雄の差が明らかにできない個体が認められた。この原因としてはエサなどの影響も考えられ、今後さらに検討する。 さらに、チョウザメを生かしたまま簡易に測定できる部位として、ヒレあるいは体表等より各種RNAを抽出する方法について検討した。今後、RNAを調べることにより、雌雄間での遺伝子発現レベルの違いを明らかにする。
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