【1.麻痺性貝毒生合成酵素及び麻痺性貝毒の免疫染色による検出】 渦鞭毛藻の麻痺性貝毒生合成の初発の反応を触媒する酵素(SxtA)の抗ペプチド抗体(抗SxtA4抗体)による免疫染色法を確立した。麻痺性貝毒を生産する種の渦鞭毛藻にのみ、SxtA4が存在すること、SxtA4は細胞内オルガネラに局在することが示唆された。本手法を生合成経路で次の反応を触媒するアミジノトランスフェラーゼ(SxtG)に対する抗ペプチド抗体(ウサギ由来抗SxtG抗体)による免疫染色に応用し、SxtGははSxtA4とは異なる局在を示すことを見出した。さらに市販の抗STX抗体との免疫染色で有毒株の細胞に強く反応するオルガネラが確認され、抗SxtG抗体で得られた染色像とは異なることがわかった。 【2.無毒株における麻痺性貝毒生合成酵素SxtGタンパク質発現解析】 RT-PCRや免疫染色にてA. tamarense無毒株においてもアミジノトランスフェラーゼ(SxtG)が発現していることが示唆されていた。そこでWestern blottingによって有毒株及び無毒株の細胞におけるSxtGの発現を抗SxtGペプチド抗体を用いて調べたところ、両株から理論長(43 kDa)にバンドが検出された。すなわち無毒株の細胞にもSxtG酵素がタンパク質として発現していることを支持する結果を得た。 麻痺性貝毒生合成反応は10以上のステップを経る複雑な経路であることがわかっていたが、本研究によりそれぞれが異なるオルガネラで進行する可能性が示唆された。トランスポーターなど反応酵素以外のタンパク質の介在が推定され、新たな展開が予想される。
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