研究課題/領域番号 |
15K07572
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
棟方 有宗 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10361213)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サクラマス / 銀化変態 / 降海期多型 / 好適種苗 / コルチゾル / 甲状腺ホルモン / ホンマス / マスノスケ |
研究実績の概要 |
1. 仙台市広瀬川のサクラマスの一部は、従来知られている1歳魚時の春よりも約半年早い、0年魚時の秋にスモルト化(銀化)して川から海に降海する、降海期多型であることが示されている。そこでこれらの降海期多型を弁別する指標を明らかにするため、北海道大学との共同研究により、秋に降海すると考えられる銀化魚様個体の鰓中のNa+,K+-ATPase (NKA)活性を測定したところ、これらの魚の値は同じ河川に生息する非降海(河川残留)魚よりも高いことが示された。 2. 中央水産研究所日光庁舎において、サクラマスの近縁種であるホンマスの銀化魚を用いて降河行動発現1ヶ月前の甲状腺ホルモン・コルチゾル量とその後の実際の降河行動の発現性との相関を調べたところ、降河行動を発現した銀化魚は降河行動を発現する1ヶ月前の時点で甲状腺ホルモン量が高かったことが判明した。 以上の1.および2.の実験結果から、広瀬川のサクラマスの降海期多型は通常の銀化魚と同様の性質を帯びていること、またこれらの降海性を甲状腺ホルモン量によって評価できることが示された。 3. 6月、オレゴン州立大学において、マスノスケの孵化稚魚を円筒形の水槽内で飼育し、上層、下層に分布した稚魚をさらに別々の飼育水槽で飼育することにより、異なる時期に銀化変態を行う降海期多型(種苗)を作出できるか否か検討した。その結果、下層に分布していた稚魚は、上層に分布した魚に比べて降河行動を発現しにくい個体群となっていることが示された。既に2014年に、上層の魚がより強い降河行動を発現することが示されていることから、遊泳層などの条件に従って、人為的に降海期多型(種苗)を生産できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、広瀬川において秋に見られるサクラマスの降海期多型が一般の銀化魚と同様の生理的形質を有していること、またサクラマスの近縁種であるホンマスを用いて、銀化魚の降海性を予め甲状腺ホルモン量によって評価できることを示すといったように、降海期多型の銀化のプロセスや降海性を生理的に評価する方法が開発された。また、マスノスケの稚魚から飼育条件によって降海期多型を作出できる可能性が示されるなど、概ね研究は当初の計画通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、広瀬川のサクラマスの秋降海魚(降海期多型)と他の河川の一般のサクラマス・近縁種の銀化魚とNa+,K+-ATPase (NKA)活性や甲状腺ホルモンの比較を行い、降海期多型の出現のプロセスを評価することができる形質をさらに明らかにする。また引き続きオレゴン州立大学等においてマスノスケ等の降海期多型(種苗)の作出を試み、降海期多型の出現の機構や進化的・適応的意味についても解明したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始当初購入を検討していたディープフリーザーの購入を2015年度は見送ったため。今後の計画の進捗状況に応じて、再度購入を検討したい。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年からの繰り越し金については、今後の計画の進捗状況に応じて、再度ディープフリーザーの購入に当てるか否かを検討したい。
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