研究課題/領域番号 |
15K07574
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増田 太郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40395653)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 黒変 / メタロプロテイン / 甲殻類 / 食品 / 生体防御 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、申請者がこれまでに見いだした新規フェノールオキシダーゼ(POβ)の普遍性について検討した。すなわち、食品として重要な甲殻類の一つである、カワツエビ(和名サルエビ、学名Trachysalambria curvirostris)の生鮮試料を入手し、その血リンパに存在するフェノールオキシダーゼ活性を精製、原因酵素を同定した。その結果、カワツエビ血リンパにも、POβ抗体に強く反応するβ型フェノールオキシダーゼが存在することを明らかにした。POβは、申請者らがクルマエビにおいて始めて見いだした新規分子であり、他の甲殻類においては初めてのPOβ確認例となる。 また、カワツエビにおいても、凍結融解後に著しい黒変現象が認めらた。POβは、精製過程の活性・回収率から、本種の血リンパ におけるフェノールオキシダーゼ活性の大半を担うと考えられ、本酵素の黒変への大きな寄与が示唆された。本酵素の食用甲殻類における黒変反応への寄与は全く報告されておらず、新規の知見となる。平成28年度以降は、凍結融解過程における本酵素の活性化について検討する予定である。 フェノールオキシダーゼは、甲殻類の免疫機構の一翼を担う酵素でもあるが、新規酵素であるPOβについては、免疫系への関連は全く知られていない。平成27年度は、他の免疫系因子とPOβのクロストークについて検討する準備として、クルマエビより二種類のフェリチン遺伝子のクローニングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規フェノールオキシダーゼ(POβ)は、甲殻類食品の黒変に主体的な役割を果たす可能性がある。今年度は、その普遍性について検討するため、数種の食用エビにおいて検討した。結果として、当初用いたクルマエビと同様、POβが血リンパに多く存在することが明らかとなった。以上は、当初の研究計画において、最初の二年に実施する予定で盛り込んだものであり、概ね順調、もしくは予定を上回る進捗であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度にデータが得られた新規酵素POβの普遍性に関し、食用品種を更に増やして、検討を行う。精製試料が入手しやすいものについて、cDNAの単離を行う。 更に、食品の黒変反応に対する寄与について、定量的な評価を試みる。 また、フェノールオキシダーゼは、甲殻類など節足動物における主要な免疫反応構成因子である。しかし、本酵素は申請者らが見いだした新規酵素であるため、その免疫反応への寄与は明らかになっていない。この視点から、細菌感染時に他の免疫反応分子(既知型フェノールオキシダーゼ、フェリチンなど)と、どのような役割分担を行うかについても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に平成27年度の後半に出張などが集中し、生鮮試料の購入などが予定を若干下回ったことが理由である。次年度使用額が生じたものの、金額は10万円以下であり、予算の消化は研究計画と同様概ね計画通りに推移している。
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次年度使用額の使用計画 |
本課題の研究遂行のため、必要な試料の購入、試薬、機器の購入に充当する。
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