トランスクリプトーム解析によって、クルマエビの卵巣での発現が確認されたホルモン様因子の組換え体を、可溶性タグとの融合タンパク質として大腸菌発現系を用いて作製することを試みた。発現タンパク質のうち、卵巣型甲殻類雌性ホルモン (Maj-CFSH-ov) では約30%、甲殻類血糖上昇ホルモン様ペプチド (Maj-pCHH-B) では約50%、ニューロパーシン様ペプチド (Maj-NPLP) では約80%が、大腸菌破砕物の可溶性画分に回収された。これらの融合タンパク質から、可溶性タグの除去、精製などを経て得られた組換え体は、質量分析の結果、いずれも想定される数の分子内ジスルフィド結合を持つと考えられた。クルマエビ卵巣の培養系を用いた生物検定において、Maj-CFSH-ovとMaj-pCHH-Bは、卵黄タンパク質前駆体であるビテロジェニン (Vg) の遺伝子発現に影響を与えなかった。一方で、Maj-NPLPにはVg発現を増加させる傾向がみられた。 各ホルモン様因子の主要な発現部位は、Maj-CFSH-ovが生殖腺、Maj-pCHH-BとMaj-NPLPが各神経節であった。また、トランスクリプトームデータの再解析により、ショウジョウバエのニューロパーシン受容体のホモログがクルマエビ卵巣で発現していることも判明した。 以上から、卵巣のトランスクリプトーム解析によって発見されたMaj-NPLPは、卵巣が主たる産生部位ではないものの、クルマエビの生殖制御に関与することが示唆された。
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