研究課題/領域番号 |
15K07578
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
足立 亨介 高知大学, 自然科学系, 准教授 (00399114)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イカ類 / 卵膜膨張 |
研究実績の概要 |
イカの卵は受精後に卵塊と呼ばれる粘稠な袋内ですごし、孵化までに卵径が約2 倍にも拡大する(卵膜の膨張)。この現象は正常発生に必須であり、卵塊中の主成分であるムチン様物質の作用を受けて卵内の浸透圧が変化することで引き起こされると考えられてきたが、詳細は長く不明であった。一方で申請者らは卵塊の分泌組織である輸卵管腺からこのムチン様物質を除去した画分に同現象の誘発活性を新たに見出している。そこで本研究では同画分から卵膜膨張因子(Chorionic Expansion Inducing Factor:以下CEIF))を特定し、同時に正常発生卵中のオスモライト濃度を把握することを目的とする。 本年度はスルメイカの輸卵管から3%のNaClで溶出させた画分、限外ろ過膜(排除分子量10万)、疎水クロマトグラフィーによって得た画分中でも同種受精卵の膨張活性を得た。また同組織からmRNAを精製し、その逆転写産物のNGS解析を行い候補因子配列を含むと考えられるデータベースを作成した。 また天然のアオリイカの卵塊を実験室内で培養し、膨張の進む発生段階ごとに卵液を回収し、その浸透圧を測定した。結果、発生段階にしたがって卵液の浸透圧が上昇する傾向は得られているものの、現段階では明瞭な結果は得られていない。そこに含まれるイオン濃度については有機イオンのみ測定したが最も高い濃度のアミノ酸(タウリン)で25uM程度であり、他のアミノ酸は手持ちのシステムの検出限界以下であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は想定より1ヶ月以上早くスルメイカが獲れなくなったため予定していたCEIFの単離には及ばなかったものの分画を新たに二つ進めてもなお活性が残ることが示された。NGSの解析は予定通りデータを得ることが出来た。卵膜膨張時の卵液中の浸透圧についてはばらつきが大きく現在のところ発生段階にそった明瞭な傾向は得られていない。有機イオンについては検出限界以下、無機イオンについては測定系を模索中の段階である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も同様のCEIFの分画操作を行い、完全精製を目指す。一方でアオリイカ輸卵管ではスルメイカよりも候補因子が絞り込めていることからそのホモログからのアプローチも行う。卵液の浸透圧がばらついたのは主にその保存状態に影響があると考えられるので、サンプリングした日に測定を行う。有機イオンについてはより高感度の測定系の導入を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
スルメイカの採取時期が予定より1月短かった。顕微鏡を買わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
顕微鏡購入、試薬など。
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