大豆など植物原料を主とした飼料を魚に与えるとなぜ摂餌量が低下するのかを明らかにするために、以下の研究を行った。 1.組織CCK濃度の測定 (1)従来からCCK濃度の推移は遺伝子発現量の変化から推定していたが、昨年度の成果から組織のCCK濃度の測定が可能なことがわかったので、今年度も大豆を含む飼料を摂取した魚の脳および腸におけるCCK濃度変化とそれに伴う摂餌や膵臓消化酵素の分泌応答について調べた。(2)魚粉飼料(FM)、大豆油粕飼料(SBM)、および大豆油粕を精製した濃縮大豆タンパク質(SPC)飼料をそれぞれ試験魚に与えて消化管濃度を比較したところ、摂餌前では試験区間に有意差は無かったが、摂餌後ではSPC摂取区が有意に低下していた。(3)したがってSPCに関しては、SPCを摂取することでCCKの分泌がFM飼料よりも多く分泌されて、FMよりも摂餌量低下する可能性が考えられた。(4)一方血中濃度の一過性の増加が確認されなかったことから、消化管でのCCK分泌は神経を介して脳に伝達されていることが予想された。また、摂餌停止直後における脳のCCK濃度は摂餌前に比べ有意な変動がなかったので、植物原料を与えた魚の摂餌量の低下は食欲の瞬時な減退ではなく、むしろ嗜好性の低下が主要因であると考えられた。 2.植物原料飼料の嗜好性向上 (1)陸上動物で苦味を抑制する効果があると知られているホスファジン酸の効果を期待してリン脂質を添加したところ、2%以上の添加で摂餌量の有意な増加がみられた。そこで大豆リン脂質の摂餌増強効果を有する画分を調べたところ、効果があったのはホスファジン酸ではなくホスファチジルコリンだった。一方大豆リン脂質単独では摂餌量が低下したことから、リン脂質自体に魚の嗜好性があり摂餌量が増加したのでは無いことがわかった。
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