研究課題
微細藻類の一種で、ラフィド藻類に分類されているシャットネラは強い魚毒性を示す事が知られおり、日本で頻発する赤潮の原因有害赤潮プランクトン種である。これまでの本研究室での解析から、シャットネラは高レベルの活性酸素を通常の培養条件下において常に産生する特性を有することを見出している。また、シャットネラは強固な細胞壁を持たず、セルロースを主体とした殻構造も無いが、細胞表層は粘性多糖体である糖被膜(グリコキャリックス)で覆われており、この部分に活性酸素産生酵素系(ほ乳類白血球のNADPH oxidaseに類似していると推定)が局在する事、糖被膜はシャットネラが魚鰓を通過する際、細胞本体から離脱し、鰓表面に付着する事から、鰓表面での持続的活性酸素産生が鰓機能に障害を与え、魚を窒息死させるとの推論に至っている。本研究では糖被膜に存在する酵素蛋白質、さらに、未だ実態が不明な粘性多糖体について多面的に解析を継続している。前年度での研究により1985年に鹿児島湾で分離され、それ以後研究室で継代培養されているシャットネラ株と2010年に島原半島で分離されたシャットネラ株では魚毒性が著しく異なり、島原株は活性酸素産生能が高く、より強い魚毒性を示す事を見出している。一方、二枚貝に強い毒性を示す赤潮プランクトンで、渦鞭毛藻類に属するヘテロカプサは強い溶血活性を示す事を見出している。近年、九州沿岸で赤潮原因となっている渦鞭毛藻類に属するカレニア種は魚類及び貝類両方に強い毒性を示す。最近の研究でカレニア種は溶血活性の他、活性酸素産生能が見出された。これらの知見から、溶血毒素は主に二枚貝毒性因子として、活性酸素は魚毒性因子として作用するとも考えられる。
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