研究課題/領域番号 |
15K07586
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
水澤 寛太 北里大学, 海洋生命科学部, 准教授 (70458743)
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研究分担者 |
新井 雄太 北里大学, 医学部, 講師 (60329026)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | キンギョ / ゼブラフィッシュ / ニシキゴイ / 体色 / 黒色素胞 / メラニン凝集ホルモン / 黒色素胞刺激ホルモン / LED |
研究実績の概要 |
本研究は、光照射によるコイ科魚類の体色調節技術の開発に資することを目的とする。実験対象としてキンギョ、ゼブラフィッシュ、ニシキゴイを用い、有彩色光照射が体色と体色調節機構におよぼす影響を検証した。 <キンギョ>メラニン凝集ホルモン(MCH)と黒色素胞刺激ホルモン(MSH)の発現調節に関与する有彩色光を明らかにした。MCHは体色を明化するホルモンである。青色LED光(λ = 464 nm)、緑色LED光(λ = 518 nm)、赤色LED光(λ = 635 nm)はいずれも白背地条件において黒背地条件よりもMCH発現を高めたが、青色光の発現亢進作用は緑色光、赤色光よりも高かった。MCH発現は可視光の中では短波長成分によって調節されていることが示唆された。一方、緑色LED光と赤色LED光はいずれも黒背地条件において白背地条件よりもMSH発現を高めたが、青色光はいずれの背地条件においてもMSH発現を低下させた。 <ゼブラフィッシュ>紫色光(λ = 400 nm)と緑色光(λ = 530 nm)の混合光をそれぞれ比率を変えて仔魚に照射し、黒色素の運動とMSHの発現におよぼす影響を明らかにした。MSHは体色を暗化するホルモンである。紫色光による色素拡散効果と緑色光による色素凝集効果は相加的であった。照射光の違いによるMSH遺伝子の発現レベルの変化は認められなかった。 <ニシキゴイ>背地色の明暗が鱗の黒色素胞におよぼす影響を明らかにした。色素胞の密度と色素の濃度は背地色の明暗に応じて変化したが、色素の運動は認められなかった。しかし、培養鱗に対してMCHを投与した結果、黒色素胞において色素凝集反応が認められた。ニシキゴイではMCHの産生・分泌、あるいはMCH以外の体色調節機構に変異が起こっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
キンギョにおける研究はほぼ予定通り進行している。ゼブラフィッシュにおいてはMCH受容体とMSH受容体の皮膚における発現分布の解析を試みたが成功せず、全体の進行が遅れている。ニシキゴイにおいては、色素胞の発現マーカーとなるmitf遺伝子等の同定が進んでいない。その理由は、ニシキゴイの黒色素胞の背地色応答を解析する過程で見出された新たな現象の解明を優先したためである。今後の研究に深くかかわる現象なので計画を変更した。本現象に関する研究成果は平成28年3月の水産学会春季大会において発表した。予定されていた色素胞発現マーカーの同定は平成28年度に進める。
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今後の研究の推進方策 |
<キンギョ>黄色素胞に対する有彩色光の作用を引き続き検証する。 <ゼブラフィッシュ>MCH受容体、MSH受容体の発現分の検証が進んでいない。それらの発現量が少ないことが実験を困難にしている。今後は、MCHとMSHの投与による薬理学的な解析を進め、仔魚のホルモン感受性を検証する。 <ニシキゴイ>MCHとMSH受容体ならびに色素胞のマーカー遺伝子の、皮膚(鱗)における発現分布を明らかにする。背地色やLED光照射が体色におよぼす影響を、皮膚の反射スペクトルを指標にして検証し、体色向上に有効な有彩色光を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度分の人件費として計64万円を予算に計上しており、ほぼその通り執行した。しかし、3月の雇用による人件費の支払いが翌年度の扱いになり、その分の執行額が本年度分として計上されなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
事務的な手続きの問題であり、実際の執行額に大きな変更はない。翌年度の研究を予定通り進める。
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