研究課題/領域番号 |
15K07588
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
平井 俊朗 岩手大学, 農学部, 教授 (30238331)
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研究分担者 |
柴田 安司 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (80446260)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 性分化 / 器官形成 / 生殖輸管 |
研究実績の概要 |
ニシキゴイの体成長と生殖腺各部の形態形成との関連性について、これまでに同腹の遺伝的全雌(XX)集団、遺伝的全雌(XY)集団を用いて異なる成長速度に誘導された実験区に対して、複数の開始時期ならびに処理期間にて雄化処理、雌化処理を実施し、性転換誘導の成否と処理開始時の体長との間に関連性があることを確認した。今年度は雄化試験魚を中心として処理終了後における性転換処理魚の生殖腺について継続観察を行った。その結果、精巣化が誘導された実験区では処理終了12ヶ月後もほぼ同率で精巣組織は維持されており、遺伝的性(卵巣)への復帰を思わせる所見は見られなかった。一方、処理終了時に高率で精巣化が確認されたにもかかわらず、精液搾出率については時間経過による改善は確認できず、性転換魚における輸精管機能に何らかの構造的または機能的不全が生じている可能性が示唆された。そのため、精巣化が確認された個体について生殖腺尾部側(総排泄口直前)における生殖輸管の形成状況について組織学的観察を行ったが、現在までの所、通常雄(XY)精液搾出魚との比較において明確な形態差は確認できておらず、機能的な不全の可能性が高まった。 アメマスについては前年度に行った雄化処理試験では精巣化が確認できなかったが、孵化後12ヶ月において不完全ながら雄化傾向(卵巣分化の阻害)が見られた個体について生殖腺全体の観察を行った。その結果、生殖腺本体(頭部側)で部分的に精子形成が確認され、その基部には輸精管が形成され、尾部側でも輸精管の原基と思しき上皮細胞の集塊が観察された。一方、中間部では輸精管形成は確認されず、頭部寄りの部位では卵母細胞が観察された。さらに生殖腺全体で雌(卵巣)に特徴的な繊毛上皮が確認された。以上の結果より、輸精管形成は生殖腺の両端から中央部に向かって進行することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の異動にともない、ニシキゴイについては当初の飼育試験の研究計画を縮小再編せざるを得なくなってしまった。対応策として新潟県内水面水産試験場において雄化試験を実施していただけることとなったが、当該実験区については次年度に初回成熟を迎えるため、今年度は組織学的解析をするには至らなかった。また、追加対応としてアメマスを研究対象として飼育実験を開始したが、研究計画初年度に実施した雄化処理では十番な精巣化を誘導できなかったため、輸精管形成不全について詳細な調査を行うには至らなかった。そこで今年度(昨年秋)に得られた稚魚を用いて、新潟県内水面水産試験場ならびに岩手大学三陸水産研究センターにて処理条件を拡充して新たに雄化処理実験を開始したが、こちらも次年度までの育成が必要であるため、組織学的解析を実施するには至っていない。以上の理由により、今年度は昨年度までの飼育実験試料の再解析を中心に行わざるを得なかった。そのため今年度予定していた研究計画の一部を実施できず、研究費の一部を次年度に繰り越すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
継続中の飼育実験の試験魚について生殖腺の形態的観察を実施する。次年度は当該研究計画の最終年度であるが、これらの試験魚の組織観察が本格化できるのが次年度後半となるため、当初研究計画においても想定していたように年度内にこれらの研究成果の取りまとめが完了できない可能性が考えられる。その場合には研究成果報告時期の延長を申請することも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動や当初の飼育実験で解析に必要とされる試料を確保出来なかったことにともない、飼育試験実施計画の再編が必要となり、今年度新たな飼育試験を開始したが、使用魚種の繁殖期等の関係でこれらの試験魚については年度内に組織学的解析ならびに分子生物学的解析を実施できなかった。次年度まで継続飼育を行った上でこれらの解析を行うため、そのための経費を次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
追加試験魚の解析が可能となる次年度後半に繰り越した研究を使用して、今年度内に実施できなかった組織学的解析ならびに分子生物学的解析を実施する。
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