ニシキゴイについては、前年度までの雄化処理試験によって精液搾出を確認できなかった個体について、新潟県内水面水産試験場において1年間の継続飼育試験の後、再度、精液搾出確認、生殖腺形態観察を実施した。その結果、試験個体の約1割程度で精液搾出が確認されたが、半数以上が不妊化個体(雄性化処理の不調)であり、前年度の組織学的観察で得られた精巣化率との間で齟齬が生じた。この原因については現在の所不明であるが、前年度の組織学的観察において精巣化が確認された個体のうち、精巣組織の発達が全般的に悪かったことと関連している可能性があり、今後、この点を検証すべく研究を進める予定である。一方、処理開始時に供試同腹稚魚を体長で大中小3群に分けて行った雄性化試験では、処理開始時の体長が大きいほど雄性化率が低下する傾向がみられ、本技術の有効性について確認することが出来た。以上の結果については、現在論文投稿準備中である。 アメマスについては、新潟県内水面水産試験場における前年度の雄化試験不調を踏まえて、岩手大学三陸水産研究センターにて改めて雄化処理試験を実施した。本試験では雄化処理方法をそれまでの断続浸漬から、連続浸漬へと変更し、3種の薬剤で複数の濃度区を設定した。その結果、いくつかの実験区で精巣化を示す組織学的所見を得ることができ、それらの個体では生殖腺後部に輸精管の原基と思しき上皮性細胞の集塊が見いだされた。現在、本飼育試験を継続中であり、成熟に向けて輸精管形成過程を追跡するとともに輸精管形成細胞の起源を探るべく、特異マーカーの探索を継続する。本成果については平成30年度日本水産学会秋季大会において発表した。
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