研究課題/領域番号 |
15K07594
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
池原 強 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産大学校, 教授 (90359951)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海洋自然毒 / シガテラ / 酸化酵素 |
研究実績の概要 |
シガテラ中毒は熱帯や亜熱帯に生息するシガテラ魚によって引き起こされる自然毒食中毒である。シガテラ魚に含まれるシガトキシン(CTX)の組成は、環境や魚種によって異なり、その含有量が非常に微量であるため、単離精製するのは困難であり、分析に必要な標準毒の確保が難しく、未だ毒化機構が明らかにされていない。そこで、本研究では、シガテラ魚の毒化機構を明らかにするため、in vitroにおけるCTX酸化反応系の構築とCTX酸化酵素の活性検出を行い、シガテラ魚およびその近縁種の肝臓抽出液を調製し、in vitroにおけるCTX酸化活性の比較を行った。 平成27年度において、ヒトCYP3A4及びヒト肝ミクロゾームによるCTXのin vitro酸化反応条件(反応温度、反応時間、酵素量等)を検討し、さらに、代表的なシガテラ魚であるバラフエダイ(Lutjanus bohar)肝臓からCTX酸化酵素の活性を検出し、in vitroCTX酸化反応系を構築することが出来た。平成28年度はこの反応系を利用して、バラフエダイ以外のシガテラ魚に関してもCTX酸化酵素の活性の検出を試み、魚種間における特異性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、バラフエダイ以外のシガテラ魚に関してもCTX酸化酵素の活性の検出を試み、魚種間における特異性について検討を行う実施計画を立て、沖縄県周辺海域に生息するシガテラ魚2種(バラフエダイ: Lutjanus bohar、イッテンフエダイ: L.monostigma)及びその近縁種で無毒魚種と知られる2種(ヒメフエダイ:L.gibbus、L.fulviflamma)を蒐集し、肝組織抽出液(S9画分)を調製し、CTX酸化酵素の活性の検出を行った。結果として、シガテラ魚であるバラフエダイ(L.bohar)及びイッテンフエダイ(L.monostigma)ではCTX4A/4Bの酸化型である52-epi-54-deoxyCTX1Bが検出された。また、バラフエダイでは、54-deoxyCTX1Bが検出された。一方、シガテラ魚の近縁種であるヒメフエダイ(L. gibbus)及びニセクロホシフエダイ(L.fluviflamma)は、epi-deoxyCTX1B、54-deoxyCTX1B、及びCTX1Bの高いピークが検出された。また、シガテラ魚より無毒魚種と知られる近縁種の方が肝臓中のCTX酸化活性が高いことが分かった。このように、魚種間におけるCTX酸化の特異性について示すことが出来た事から、進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までの成果として、in vitro CTX酸化反応系を構築し、魚種間のCTX酸化活性プロファイルを作成することが出来た事から、平成29年度以降は、この系を利用してシガテラ魚肝臓中のCTX酸化酵素の精製や酸化生成物の解析を行う予定である。バラフエダイ肝臓から調製された肝臓S9画分中に見出されたCTX酸化活性を指標にして酸化酵素の抽出・精製法を検討すると同時に、酸化反応生成物に関しても詳細な分析を行う。これらの成果は、論文発表や学会発表等を通して広く社会へ発信する予定である。
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