研究課題/領域番号 |
15K07595
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東山 寛 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (60279502)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TPP11協定 / 日EU・EPA / 畑作農業 / 草地酪農 / 地域マネジメント / 担い手育成 |
研究実績の概要 |
2017年初頭のアメリカのTPP離脱は、3つの動きを生みだした。第1に、アメリカ抜きのTPP11(イレブン)である。第2に、日米二国間の新たな枠組みである「日米経済対話」である。そして第3に、メガFTAの締結に向けたステップをトランプ大統領の外交日程と合わせて刻んでいく「タイミング重視」とでも言うべき進め方である。これに該当するのは、日EU・EPA大枠合意(2017年7月6日/G20日程)、TPP11大筋合意(11月11日/APEC日程)、TPP11最終合意(2018年1月23日/世界経済フォーラム)である。 2017年度末時点で、TPP11協定は参加国による署名が完了しており(2018年3月8日)、日本も含めて国内承認手続きのステップに移行している。また、日EU・EPAも大筋合意が両政府から発表されており(2017年12月8日)、年内にも署名が行われる見通しである。これにより、日本農業・北海道農業はいよいよ「メガFTA時代」を迎えようとする局面にある。 したがって、本研究の出発点である「自由貿易推進体制」への対応が、我が国及び北海道農業に求められる状況は不変である。そこで、2017年度においては、①TPP11協定及び日EU・EPAの農業分野における合意内容を引き続き詳細に検討し、雑誌論文等への発表を行った。さらに、本研究でマークしている北海道の普通畑作地帯(オホーツク地域)、草地酪農地帯(根釧地域)の実態分析では、世代交代期にあって確実に農業従事者が減少する状況を想定し、②畑作地帯では、規模拡大に伴う合理的輪作体系の再構築、労働力支援、先進技術の導入を含む地域マネジメントの革新、③酪農地帯では、新たな担い手の確保・育成システムの構築に着目した実態分析を行い、報告書等に取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、北海道の畑作・酪農地帯を中心として、土地利用型農業の体質強化策を具体的に検討するために、定点的な観測を実施する調査地点を設定している。 具体的には、①道東畑作中核地帯である小清水町(オホーツク地域)、②同じく道東の中山間畑作・酪農地帯である津別町(オホーツク地域)、③根釧地域の草地酪農地帯である浜中町の3地域である。いずれの地域においても、現地関係機関の協力を得て、継続的かつ詳細な実態調査を実施することが出来ている。 現在までの成果として、①については地域農業全体の課題整理を行い、2018年から3年間の計画期間を有する農協の地域農業振興計画の取りまとめに参画し、②では先進技術の導入と効率的利用、新たな労働力支援体制の構築を含む地域マネジメントの革新にかかわる検討を進めており、③についても新たな担い手確保・育成の仕組みにかかわる実態調査を実施すると共に、根釧管内の他地域における同様の観点からの調査研究に着手することも出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、定点的な観測を行う調査地点である、①小清水町(畑作中核地帯)、②津別町(中山間畑作・酪農地帯)、③浜中町(草地酪農地帯)の3地域の実態調査を継続して実施する。 2018年は研究の最終年度にあたるが、これまでの調査研究を通じて焦点は絞られつつある。具体的には、①の畑作農業における合理的輪作体系の再構築、②における地域マネジメントの革新、③も含む草地酪農地帯における新たな担い手の確保・育成システムの構築であり、いずれの取り組みも地域農業の生産基盤の維持・強化を展望している点では共通している。 本研究の取りまとめは、北海道土地利用型農業の体質強化にかかわり、①輪作体系の再構築、②地域マネジメントの革新、③新たな担い手対策、の3点にわたって取りまとめる予定である。
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