2019年度は「自由貿易推進体制」をめぐって大きな変化があった。2020年1月に日米貿易協定が発効し、先行したTPP11協定及び日EU・EPAを加えて、北米・オセアニア・EUという先進輸出国を相手にしたメガFTAがすべて出揃った。文字通りの「メガFTA時代」に北海道農業・日本農業は直面することとなった。 FTAの農業への影響には3つの側面がある。①国境措置の引き下げに伴う価格影響、②同じく農業保護財源の喪失、③輸入増加に伴う国内農業の縮小可能性である。政府は影響分析・影響試算を通じて、①②の影響をある程度想定しつつ、TPP等対策の具体化を図ってきた。 政府のTPP等対策は、2015年10月のTPP大筋合意時に構築された枠組みを基本的には継続している。対策の柱は2つあり、「体質強化策」と「経営安定対策」の充実である。後者については、重要5品目の経営安定対策にかかわって、一連の法整備を図ってきたことは評価できる。 他方、前者については、今後の方向性をめぐって議論の余地があるように思われる。体質強化策は、基盤整備、産地パワーアップ事業、畜産クラスター事業をメインメニューとし、2015年度補正予算以降、毎年ほぼ同額の予算が確保されてきた。しかし、2019年12月の「農林水産業・地域の活力創造プラン」に「農業生産基盤強化プログラム」が添付されたように、生産基盤強化は農政のメインストリームとなりつつある。TPP等対策も、ここに合流させるべきであろう。 本研究は、メガFTA時代を迎えた2019年度に至って、北海道土地利用型農業の「生産基盤強化」にかかわる現場レベルの対応に、改めて焦点を置くこととなった。特に重点的に取り上げたのは、地域を単位とした複数戸法人化の取り組みである。畑作地帯を中心として道内の複数事例を調査し、その知見をとりまとめると共に、直面している新たな課題について整理した。
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