本研究は、シュルツ農業問題論のアメリカにおける継承、日本における受容について検証したものである。低所得問題を農産物市場の不均衡に求めるシュルツ理論に関しては、その後、要素市場面からの研究が蓄積された。しかし、労働節約的技術進歩によって供給増大が抑制され、下層の要素価格が均衡状態にあることが判明すると、シュルツ理論はアメリカでは放棄されるに至った。日本ではシュルツ理論に対しては当初から批判的であり、過剰就業論が研究の潮流となっていたが、速水のテキストが現れると、シュルツ理論が農業問題論のもう一方の定説となった。アメリカでシュルツ理論が放棄されたことが日本で認識されていないのは、不思議である。
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