研究課題/領域番号 |
15K07601
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
小山 良太 福島大学, 経済経営学類, 教授 (60400587)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 風評被害 / 検査体制 / 放射能汚染 / 原子力災害 / 営農再開 |
研究実績の概要 |
流通業者、消費者調査の結果、原発事故とそれに伴う放射能汚染問題によって、現実に福島県産農産物のブランド価値が低下していることが示された。現在の福島県産農産物の状況は放射能汚染による風評被害というよりは市場構造の転換であり、福島ブランド・イメージの下落である。放射能リスク情報によるリスク・コミュニケーションや福島応援といった風評対策だけでは対応できない段階に突入している。 「市場における評価」は、取引総量や取引価格にとどまらず、取引順位にもあらわれている。これは福島ブランド(産地評価)が毀損されたことを示しており、流通過程における実害である。この市場における産地評価を回復するためには、震災前以上の厳しい安全性を担保する仕組みを提示することが求められる。 今回の原子力災害では、まず賠償の枠組みが示されたことによる混乱が大きな問題となっている。原子力災害対策特別措置法では、価格下落分の賠償(風評)、避難に伴う経済的損失などを個人ベースに賠償する仕組みであったが、産地、農村、地域ブランド価値の下落といった面的な損害に対する補助、支援の枠組みが不明確なまま現在に至っていることが地域内の様々な軋轢や分断を生んでいる。この根本的な原因はそもそも震災、原発事故により何が毀損されたのかを明確に区分できていないことに起因する。回復可能な損害(出荷停止分や価格の下落、移転費用など)と不可逆性の高い損失(ブランド価値の低下や後継者層の流出など)を明確を区分するためにも原子力災害実態調査結果を整理、総括する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外の風評調査結果など当初予定よりも早く調査研究に着手することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
避難解除地域が増え、帰村・営農再開が進む中、本研究の成果を被害地域に還元、普及するため地域組織との連携を深める。自治体及び農業団体と協力し地域営農再開・振興計画の作成に着手する。
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