東日本大震災・東京電力福島第一原発事故から8年が経過した。被害地域である福島県では事故から数年間、放射能汚染対策の体系性、風評対策の実効性の面で課題が残存し、復興の妨げとなってきた。出口対策中心の現行の検査体制や汚染実態の把握なしに実施されている除染・吸収抑制対策では農地、作物ごとの放射性物質含有リスクに対応できず、風評問題の根本原因となっていた。本研究では、効果的な放射能汚染対策を実施するために放射能汚染関連の研究成果を整理・統合し、営農環境・作物ごとのリスク管理体制の構築、それに基づく放射能検査体制の体系化と認証システムを設計することを実施した。 第1は、放射性物質循環系の把握とそれに基づくリスク評価である。第2は、農地(放射能汚染度、土壌成分)、営農環境(用水、周辺環境)、作付作物(移行リスク)を基にした4段階リスク管理手法の開発とモデル化及び普及システムの構築である。ここではリスク管理の結果(安全の根拠)を担保するための認証システム(安心の理由)について検討し、「風評」被害対策効果について検証を行った。第3は、四段階リスク管理手法の運用に伴い、現行の出口対策(米全袋検査及びモニタリング法)に生産対策を付加した場合の費用対効果分析を行い、検査体制高度化の費用負担問題及び福島県以外の汚染地域への適用可能性についても検討を行った。 本研究は、研究成果・情報の総合的活用と現地での運用を目指した。放射能汚染に関する試験研究は被災地で運用されてこそ意義がある。
|