本研究は、農業経営の内部に存在する企業ソーシャルキャピタルが、経営資源の調達と利用、経営管理に作用し、経営成果を規定するメカニズムを明らかにすることを目的とした。ファミリービジネス研究と企業ソーシャルキャピタル研究の成果を農業経営管理論の中に展開し、実態調査分析と経営データの数量分析に基づく実証的研究を行った。さらに、多様な企業形態や経営組織の農業経営の比較分析によって、家族、地域、経営に規定される農業経営における企業ソーシャルキャピタルの特性を解明し、競争力のある持続可能な農業経営の実現に資する実践的な政策提言をまとめた。また、企業ソーシャルキャピタルを核に、企業形態論、経営組織論と経営管理論の総合化を図った。農業経営における企業ソーシャルキャピタルが経営管理、競争優位を通じて経営成果に影響するメカニズム、およびその他の経営資源、企業形態、経営組織との相互関係を実証分析によって経営管理論的に明らかにした。特に、農業経営の特質と現状を踏まえて、企業ソーシャルキャピタルの多様性に影響する要素として、家族、地域、経営の3要素を設定し、これらの要素の構造、理念、文化等の特質と企業ソーシャルキャピタルとの関係を明らかにするとともに、企業ソーシャルキャピタルの把握、経営者能力と事業展開および経営成果との関係の把握を通じて、企業ソーシャルキャピタルの機能とその発現のメカニズム、経営組織と経営管理の実態と企業ソーシャルキャピタルとの関係を明らかにした。
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