これまでの調査内容の整理分析とデスクトップリサーチから、地域イノベーション創出環境の形成と人材マネジメントを2つの軸として、日欧の比較制度分析から持続可能な地方創生の成立条件を考察した。 第1に、地域イノベーションシステムの創出においては,異業種連携や地域の面的な広がりを持つステークホルダー間の連携が不可欠となるため、多様な主体間の利害関係の調整や協働で取り組むプロジェクトの企画立案から実施までをマネジメントするコーディネーター機能の有無がその成否の鍵を握り、EUではすでに公募型の職業として成立していることを明らかにした。 第2に、内閣府の「地方創生人材支援制度」により、勤務する地方大学から大学所在地県内の地方自治体にシティマネージャーとして派遣された2年間の実務経験と、行政組織内部からの観察結果を基に、理論と実践の融合を図り、地域人材マネジメントに資する実践的な地方創生人材育成プログラムの設計・開発を行なった。 その背景認識には、以下の3点が挙げられる。第1に、我が国の地方創生政策の枠組みでは、自治体が策定する中長期的な将来ビジョン(地方版総合戦略)が、政策実施や地域イノベーションの創出を左右するため、自治体職員の果たす役割が非常に大きくなっていること。第2に、自治体職員に求められる戦略策定力や課題抽出力、多様なプレイヤーとの共創力の向上が課題として挙げられること。第3に、変化を嫌う公務員気質や、行政組織の縦割りによる有機的連携の欠如が、新事業創出や地域イノベーションの阻害要因となっている実態があること、である。 よって、人口減少下における持続可能な地域経営の見地から、地方自治体の人的資源マネジメントに重点を置き、地方創生に資する人材育成プログラムの設計・開発とともに実証実験を行ない、その実効性を吟味した。
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