研究課題/領域番号 |
15K07612
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森高 正博 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20423585)
|
研究分担者 |
福田 晋 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40183925)
豊 智行 鹿児島大学, 農学部, 教授 (40335998)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 食品の安全性 / 信頼 / 流通 / ゲーム理論 / 情報の非対称性 / 信念の合理性 |
研究実績の概要 |
信頼のコントロールを前提とした食品安全制度設計・運用を理論的に検討するために、食品の安全性に対する信念の非合理性を仮定した分析モデルが必要であり、森高[2]ではその基本的な流通モデルが提示された。しかし、この基本モデルでは、流通業者と消費者間で、合理性および信念が共通であるという強い仮定を置いていた。平成27年度はこの仮定を緩和し、流通業者と消費者、あるいは消費者グループ間でこの非合理的な信頼の程度が異なることを許容するモデルへの拡張を試みた。 特に、川上の生産者に近い流通業者において、より正確な情報を持っており、相対的に消費者の信念の乖離が大きいことを仮定し、上記の一般化モデルを構築、解析した。その結果、以下の結論を得た。 1)安全性に対する流通業者自身の評価水準(信念)よりも低い消費者の評価水準に直面した流通業者は、消費者が同等の評価をしている場合に比べて、派生需要が縮小する。逆に、消費者の評価水準が流通業者自身のそれより高い場合は、派生需要が拡大する。 2)市場に供給されている製品に対する高すぎる(低すぎる)信念が持たれている場合、森高[2]ではかえって安全性の低い(高い)生産者しか市場へ供給できない状況が発生するが、流通業者だけでも合理的な信念を持ちえた場合、この状況が緩和される。ただし、1)の効果があるため、完全に解消することはできない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、概念検討、および理論モデルの一般化について進める他、信頼感の非合理性に関する調査設計について検討することとしていた。この調査設計については、広範な資料収集と文献調査が必要であるが、当初の想定以上に時間を要したため現時点では期待した成果を得ていない。また、流通業者に対する調査設計については、別途、効果的な調査方法案が浮上したため、こちらについても併せて検討を進めた結果、平成27年度では調査設計の確定には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、当初計画通り、理論モデルにおける更なる拡張を行うと共に、流通業者および消費者に対する調査実施を行う年としている。昨年度から持ち越している調査設計については、年度前半で確定させ、本年度の調査実施と一次集計を行いたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の研究において、流通業者、消費者への調査設計を行うことになっており、これの確定をもって分析ソフトおよび流通業者総覧等のデータベース等の購入を予定した。しかし、先述の通り、調査設計の確定に至らず、関連する購入等も先送りすることとなった。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度は、調査設計の確定と関連する物品等の購入を予定。また、当初の予定通り、実際に調査を実施することに伴う調査費も併せて使用予定。
|