研究実績の概要 |
本年度は主体間関係に注目し次の検討を行った。1前年度実施した量販店(GMS/SM)の商品化行動の要点整理(論文化・口頭発表)後、2その含意に注目し納品側から量販取引・対応実態を調査・確認した。また、3量販店の販売方向の主体間関係の補足調査として、消費者の購買行動等を検討した。 1 小売競争の激化等に伴う需要の不確実性の増大は、商品化の成否や同業他社との競争も関係し二律背反の関係にある販売・機会両ロスの抑制対応力を量販店に問う。それは不確実な実需に仕入を如何に近づけるかと同義で、量販店の内部対応には限界がある。関東の量販調査では2010年頃以降、仕入ロットの小口化や発注延期等が確認され、つまり納品側で商品調達や在庫負担を巡る投機的リスクが増すことが示唆された。 2 マグロ商社等6社で聞き取り調査を行った。商談開始は2・3カ月前、取引期間(値決め)は最低1カ月が基本、売買契約書に量は記載されず口頭の概数と実取引の誤差(±)は大きい、最近10年内に高次加工・小口・短リードタイム納品が進む、こと等が確認された。不確実・曖昧化する受注に対し、欠品防止を前提に納品側で投機的リスク負担が必然化し、そのヘッジ・対応力が取引維持と採算確保の両面で問われる状況が示唆された。 3 NTTコムオンラインのモニター約1,100名(関東)に、家計の消費実態と購買行動を調査した。資源問題等の情報を付与したグループとそうでないグループに分けて選択実験結果を分析したところ、前者グループでは資源保全への取り組み品(ラベル貼付)の効用が高まる結果を示し、つまり消費者教育の徹底が選択購買の見直しを通じ生産・流通業者の対応改善を促す原動力となることが示唆された。 川下起点で主体間関係に注目し流通・取引構造を捉えれば、資源利用問題を巡ってフードシステム内部に分断が生じていることが示唆され、その解消が課題になると考えた。
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