研究課題/領域番号 |
15K07615
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
杉村 泰彦 琉球大学, 農学部, 准教授 (80405662)
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研究分担者 |
小糸 健太郎 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (00347759)
内藤 重之 琉球大学, 農学部, 教授 (30333397)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 流通系食品廃棄物 / 食品ロス / 卸売市場 |
研究実績の概要 |
本研究は生鮮食品流通過程から排出される流通系食品廃棄物について、その発生抑制と再資源化の成立条件を明らかにすることを目的としている。28年度は、1.国内における流通系食品廃棄物の再資源化に係る調査として、北海道別海町の肥料メーカーに対してヒアリングを実施した。これまで食品リサイクルの分野では堆肥化によるリサイクルは需要の不安定性を伴うことなどから、飼料化を優先させるべきという考え方が強かった。しかし、本事例からは、堆肥化についても、堆肥としての商品力とマーケティングによって状況は大きく異なるという重要な知見を得られた。このことは、品質管理の困難性などを考慮した場合、一概に飼料化が堆肥化に優るとはいえないということを示している。 2.卸売市場における流通系食品廃棄物の排出実態と再資源化について、継続性のある2事例をヒアリングした。再資源化あるいは処理システム自体は概ね円滑に運用されているものの、経常的な経費の存在に加え、システムの老朽化に伴う修繕費の増加などにより、開設者(自治体)にとって費用負担が問題になりつつある。本研究の課題とともに、今日の卸売市場制度の公共性に係る議論にとっても重要な示唆が得られた。 3.海外事例における流通系食品廃棄物の排出構造、発生抑制、再資源化に係る課題として、1)台湾の地方都市の取り組み、2)フランスにおける食品廃棄物対策について実態調査した。1)については、宜蘭県を事例としたが、これまでの研究で判明していた台北市と類似したシステムを導入していた。ただし、堆肥および飼料の利用状況についてはやや異なっていた。2)フランスについては、GMSなどの排出者からの調査ができず、フードバンクに焦点を定めて、そこから食品ロス対策について調査した。ここから「食品廃棄禁止法」下の食品ロス対策について重要な知見を得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外調査については、当初予定していたフランスでの調査が可能となったものの、計画していた事例からの協力を得ることが困難となり、それに伴う調査計画の変更により実施が大幅に遅延した。 国内事例については、再資源化事業の失敗事例調査が困難となっており、計画の再検討が必要となっている。また、その他の再資源化事例調査についても、調査対象の変更が必要となり、日程調整の都合上、年度末に実施せざるを得なかった。 これらにより、27年度から28年度に持ち越した調査に関わる研究成果を年度内に発表できていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は前半に1)オランダにおける食品廃棄物対策の調査を実施、2)卸売市場における流通系食品廃棄物の実態調査を実施する。1)については、前年度のフランスでの調査においてフードバンクを中心としたため、オランダについても同様の視点から流通系食品廃棄物の排出実態およびそれへの対応、そこにおけるフードバンクの役割について把握する。2)については、前年度に2事例を調査済みであり、本年度は引き続き2事例を調査し、過去の調査記録と比較分析する。 本年度後半は、3)再資源化事業の失敗事例調査、4)流通系食品廃棄物の再資源化事業調査、5)海外の卸売市場における食品廃棄物の排出とその対策について調査を実施する。3)については、1事例を予定しているが、事例の協力をどの程度得られるのか不明なため、それを踏まえて取りまとめの方向を検討する。4)については、飼料化事例2件の調査を予定しており、28年度の堆肥化事例調査と合わせて分析する。5)については、フランスにおける流通調査を実施する。前年度調査から量販店、食品スーパー等からのヒアリングは困難であるとみられるため、卸売市場を中心に調査する計画としている。前年度および本年度前半のフードバンク調査とともに、海外における食品廃棄物の排出構造、抑制および再資源化対策とその実態について取りまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内調査が遅れていることに加え、海外調査(フランス)については、研究代表者、分担者がともに単年度の別予算でこの研究課題の調査もできることとなったため、必ずしも科研費から支出する必要がなくなった。また、海外調査(台湾)については、申請時の見積もりよりもかなり安くなったため、その残額が生じている。 物品費については、優先すべき旅費の確定後に使用する方針としているため支出を見送った経緯があり、それが次年度使用額に加わっている。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の事情で、28年度は別の予算で今回の研究テーマの調査機会を増やすことができた。そのため、29年度には支出しなかった旅費を投入し、予定していた国内調査に加え、海外調査を2回実施する計画としている。 29年度については、すべての調査旅費を科研費から支出し、見送っていた物品も購入するため、最終的には当初計画通りの支出金額となる見込みである。
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