研究課題/領域番号 |
15K07620
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
谷口 信和 東京農業大学, 農学部, 教授 (20115596)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | JAによる農業経営 / 条件不利農地への対応 / 直営型から出資型への移行 / 1JA複数出資型法人 / 集落営農型法人の質的転換 |
研究実績の概要 |
平成28年度は二つの異なる課題に着手することを目標としていた。 第1は本格的な全国アンケート調査に先立って、平成27年7月から実施した簡易アンケート調査結果を整理して、JAによる農業経営がどのような全国的な広がりをもって展開しているか、どのような新しい課題に取り組んでいるかについての計数的な検討を行い、とくに条件不利農地対応に関する特殊課題の分析に挑戦することであった。また、その重要な一環として、JA直営型経営の存立構造を直営型から出資型への移行の事例を通して検討し、直営型経営をめぐる問題状況を確認することであった。 この点については筆者らの独自の集計では出資型法人578、直営型経営36の合計614のJAによる農業経営の存在を把握し、600の大台にのったことが確認された。また、有力な直営型経営が出資型法人に移行した事情をつぶさに検討し、持続的な経営体存続にあたってのJAの支援の重要な意義が指摘された。 第2は、600の大台に乗ったJAによる農業経営のかなり詳細な全国アンケート調査を実施し、その今日的な到達点の全貌を明らかにする課題に着手した。しかしながら、これだけ数が多くなってきた経営に詳細なアンケート調査表を送付して高い回収率を確保することは極めて困難であり、全中やJA県中央会・単協に依存するだけでは難しいことから、筆者ら研究者の努力によって、当該の法人などに繰り返しの要請・依頼を実施することを決断して実施中である。現在までに、60%超、400法人(経営)以上の回収が実現しており、最後の詰めをしている最中である。平成29年度にはアンケートデータの入力・分析に直ちに着手するとともに、新たな実績を上げている事例の個別調査分析も行い、報告書から図書の作成に向けて大きな一歩を進める予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れの最大の理由は執筆者の家族の介護に割かれる時間が平成28年度に急速に拡大し、十分な研究時間が確保されなかったことである。しかし、平成28年末には状況に改善が見られたことから、遅れの回復が図られた。 第1に、簡易アンケート調査の実施と分析は若干の遅れを伴いながらも平成28年末までに完成することができた。 第2に、全国アンケート調査は実施方法の紆余曲折を含みながらも若干の遅れで進展している。 第3に、研究時間確保の困難の影響を最も受けたのは個別現地調査であり、当初予定の1/3程度しか実施できなかった。このことが研究費の少なくない部分の繰り越し措置を取らねばならなかった理由である。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、やや遅れているという自己評価ではあるが、平成29年に入ってからは研究環境の急速な改善が見られ、遅れは徐々に克服されつつあるので、特別の方策によらずとも、当初課題の達成の展望が見えてきたといってよい。 5月末までに全国アンケート調査の調査表回収を終え、調査表データの入力・分析に直ちに着手するとともに、個別事例調査を並行して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のように、申請者の家族の介護に割かれる時間が大幅に増加したために、主として現地調査が当初計画の1/3程度しか実施できなかったことから、旅費を中心として繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は6月初めから現地調査を本格的に実施する予定であり、前年度は時間的な制約から実現できなかった遠隔地の調査にも精力的に取り組む所存である。また、学内の教育業務が学部再編の影響を受けて、縮小していることからも、時間的な余裕が生まれており、調査研究に振り向けることができる時間がかなり増加しているので、使用計画の確実な実施が見込まれる。
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