EUでは2012年に慣行型ケージ養鶏が禁止され、統計上はエンリッチドケージが約5割を占めているものの、スーパー等の店頭からはほぼ消滅した。EU規則で卵殻そのものに生産コード(有機0:放牧1:平飼い2:改良型ケージ2)の数字が印字され、その理解が進んだ。仏・伊両国の養鶏業フードチェーン調査を通して、従来型の卵・鶏に関してはすでに販売訴求力を持たず、ケージフリーやスロウグローイングがコンセプトとなっていることが解明された。このようにEUでは、制度面と消費者ニーズに対応したAWフードチェーン開発で大きな前進が見られるため、さらにスーパーマーケットチェーン、酪農と養鶏業の生産者、および関連団体、業界団体等に複数回の現地調査を実施した。特に仏国は、 消費者のAW畜産のみならず有機農畜産業への関心と有機食品への需要が急速に増大しており、大手流通業による有機食品チェーンのM&Aが進行している。そのうちの一社であるビオセボン(Bio c ‘Bon)は、日本の大手食品流通業イオンに買収され、日仏両国で店舗数を増大させている。取り扱い商品は従来より低価格に抑えられている。 酪農乳業では有機酪農専門乳業会社「ビオレ」が存在感を増し、ラクタリス等の大手乳業を離れ、ビオレ傘下に入る有機酪農経営体も急増している。人口密度が低いため日本のようなJA直売所は少ないが、生産・製造加工までの一貫経営、都市消費者のチーズ工房経営等、新たなビジネス展開の萌芽が見られ消費者の支持を集めている。 英国でBBFAWが機関投資家向けのAW指標を開発し日本も含めた世界の多国籍食品関連産業の評価を実施し、ESGやSDGsとも関連した動きが拡大しつつある。 海外調査と並行して国内でのAWフードチェーンと消費者アンケート調査も実施した。消費者はAW食品を購入していても、AWへの内容理解には至っていないことが浮かび上がった。
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