最終年度の研究成果として、論文としては①大木茂「オーストラリアにおけるアニマルウェルフェア鶏卵価格の特徴」『農業市場研究』第26巻第1号(通巻101号)58-64、2017.6(査読有り)、ならびに②、大木茂「アニマルウェルフェア鶏卵の小売業競争ー英米における鶏卵小売業調査から」松木洋一編著「日本と世界のアニマルウェルフェア畜産下巻 21世紀の畜産革命 アニマルウェルフェア・フードシステムの開発」養賢堂、103-118、2018.5がある。また学会発表としては、③大木茂・朱怡リン「鶏卵の飼養方法による小売価格の序列に関する一考察ー台湾南部の事例ー」日本農業経済学会、個別報告、2017.3、④大木茂「鶏肉の生産基準と表示②課題ー英国と米国の動物福祉対応」日本農業市場学会、2017.7。 ①については欧米の動きがオセアニアでも急速に波及してフリーレンジ卵のシェアの大きな上昇が消費量増大の中で起きていることを明らかにしながら、フリーレンジの基準をめぐって業界と政府市民団体間での論争も生じている。②については、英と米の違いを整理した。③については、日本への適用を含めて温暖多湿な台湾におけるAW鶏卵の展開を整理する中で社会適用に際しても課題を明らかにしようとした。まだ分析が不十分であったため論文にはならなかったが、大手企業が市場にエンリッチドケージを投入したことでAW鶏卵の市場形成に一定の促進効果とゆがみがもたらされたと考えられる。④鶏肉は、健康ブームの下で消費が最も伸びている肉類であり、かつ最もAW食品開発の取組も進んでいる。鶏肉におけるAW取組の方向性として、行動の自由としてのフリーレンジ、育種改良の方向性の改善としてスローグローイング、健康管理面での密度の規制、ワンヘルスの取組としての抗菌剤不使用飼育の流れが有り、国によりその進度におおきな違いがあることが示唆された。
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