研究課題/領域番号 |
15K07627
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
小林 富雄 愛知工業大学, 経営学部, 准教授 (60592805)
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研究分担者 |
野見山 敏雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20242240)
波夛野 豪 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30249370)
種市 豊 山口大学, 農学部, 准教授 (40640826)
相原 延英 酪農学園大学, 農学生命科学部, 講師 (30734553)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食品ロス / 需給調整モデル / 食料問題 / 環境問題 / フードバンク / 食品リサイクル |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究実績は下記のとおりである。 1)既存文献調査と国内合同調査:国内のフードサプライチェーンにおける食品ロス発生メカニズムとして、欠品回避と売場づくり(ディスプレイ)のための過剰在庫とその返品後の廃棄に至る経済モデルを構築した。また、食品ロス削減のためのシステムとして産地からスーパーまでの青果物「通い容器」の導入について実証研究を行った。 2)海外合同調査:調査の結果、香港における食品ロス発生のモデルは、事業系ではホテルなどのビュッフェ料理を中心に発生しており、フードバンク活動などを通じた取組が進んでいた。しかしながら、わが国とは異なり家庭系の食品ロスが全体の3分の2以上を占めており、家庭での食べ残しとリサイクルシステムの関係性が重要であると感じた。上海の調査では、行政としても食品ロス対策は需給システムの問題としては手付かずであり、環境対策としての側面が強いことが明らかとなった。 3)集団討議:まだ食べられるのに廃棄されるということは、使用価値と交換価値の齟齬が背景にあるからである。フードバンク活動など無償性を前提とした需給調整システムは、香港では、その活動の多様性が認められたが、フードバンク先進国の韓国と比較するとその普及の過程は大きく異なる。普及が遅れる日本を含めて比較研究を踏まえた、発展の多様性を説明できるモデルの構築が求められる。また、家庭系生ごみなどを中心に、どうしても発生してしまう未分別の食品ロスは、リサイクルによる対応が重要である。但し、その継続性を担保するために品質の高いリサイクルシステムを構築し、堆肥や飼料などの販売価格を維持したり行政が補助したりする仕組みが必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他の研究者との情報交換により、韓国の情報を入手することができたが、アジア地域における食品ロスの計測による需給調整のシステムの比較考察をする準備が整ったことは予想外の進展であった。 一方、共同研究者のうち1名が持病の悪化のため海外調査が困難となり、加工食品による需給調整については研究が遅れている。そのため、国内の青果流通における食品ロスの削減モデルとして、イノベーションの観点から通い容器を用いた腐敗性の低減と需給調整と高度化について研究を進めることにした。 モデル化については、一定の成果があった。すでにプロトタイプとしてモデルを構築している。このモデルは既存の等価交換モデルではなく、贈与を加味したモデルである点が新しく、近く公表する予定である。 食品リサイクルのモデルについては、名古屋市内のシステムと香港のシステムを比較すす段階に達しており、順調な進捗状況である。 需給調整におけるリスクに関する問題としては、先述のとおり中国(上海)を調査対象とすることが適当でないため、次年度のフランスの食べ残しの持ち帰り制度についての検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえ、次年度以降は贈与システムを組み込んだモデルの構築を完成させ、需給調整システムのサブシステムとしての位置づけを明確にする。またリサイクルシステムについても、日本、香港、韓国の比較研究を踏まえ、リサイクル品の品質維持に注目したモデル構築を進めるとともに、廃棄システムとの関連性を分析してゆく。その部分も需給調整システムのサブシステムとして位置づける。 またモデルの普遍性を確認するためにロンドンとパリの現地調査を実施する。食品ロス削減に関するキャンペーンの中心地であるロンドンでは、消費行動や企業行動の変化をもたらす市民運動家(キャンペイナー)とメディアの関わりについての実態を把握する。 2016年に食品廃棄物禁止法やドギーバッグ推進法が相次いで成立しフランスでは、パリを中心にその政策的な食品ロス削減効果と需給調整システムに対する影響を調査する予定である。 また、平成29年度に予定していた韓国調査は十分データが取れたため、台湾の調査に変更することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の1名が、持病の悪化のため海外出張が困難となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後も飛行機への搭乗が困難であり、その他の公共交通機関は乗車可能であることから、国内研究へ変更するとともに、当初予定にはなかった海外学会誌への投稿のための資金として使用する計画である。
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