研究課題/領域番号 |
15K07627
|
研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
小林 富雄 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (60592805)
|
研究分担者 |
野見山 敏雄 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20242240)
波夛野 豪 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (30249370)
種市 豊 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (40640826)
相原 延英 名古屋文理大学, 健康生活学部, 准教授 (30734553)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 食品ロス / 食料需給 / フードバンク / ベンチャービジネス / メディア戦略 |
研究実績の概要 |
前年度のアジア調査と共同研究者間での議論を踏まえて、グローバルに展開する食品ロス対策の動向をキャッチアップするために、次のような研究を行った。 先ず、フランス調査であるが、「食品廃棄禁止法」が2016年2月に施行されたため、その影響を中心に調査を進めた。フランス環境エネルギー管理庁(ADEM)では、2014年から国家協定(National PACTE signing)を契機に、段階的な制度化を進めたことが明らかとなった。フランス最大のフードバンク(Banques Alimentaires)では、190万人の生活困窮者に食糧支援をしているが、法律がなかったときから活動を活発化しており、既存の取り組みを追認するような制度化であったことが示唆された。ヨーロッパフードバンク連盟(FEBA)では、フランスが欧州で最も食品ロスの有効活用が進んでおり、その取組を周辺各国に普及しながら、EUからの援助や越境寄付の推進を進める機能もあることが分かった。その他、さまざまなベンチャービジネスが同法律を契機に生まれている。 イギリス調査では、民間のビジネスが大きく関わっている様子が明らかとなった。FareShereを訪問し、英国における食料需給システムとしてスーパーマーケット等の小売からメーカーへ余剰食品を寄付するよう働きかけをしている。また、英国在住のジャーナリストのトリストラム・スチュワート氏と意見交換の場を持つことができ、一般市民を巻き込んだキャンペーン活動の戦略的な進め方と成果について知見を得ることが出来た。非営利団体のWRAP (Waste & Resources Action Program)とも協力関係があり、データにもとづくメディア戦略による食品ロス削減の効果はかなり高いことが示された。 以上の研究実績に対して、国内外の学会報告等を行い、研究成果の共有化とブラシュアップを図っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フランスの食品廃棄禁止法(Food waste law)が2016年2月に施行されたため、欧州の取り組みが全体的に活発化し、また、アポイントメントもうまく取れ、予想以上に多くの情報を得ることが出来たため。 また、英国では当初計画になかった廃棄寸前の食品を格安で販売する会員制スーパーなどの調査も出来たため、予想外にビジネスによるソリューションの重要性が新たに発見できたことも大きい。 さらに、今年度の調査において研究者だけでなく実務家(主に日本国内外のフードバンク関係者、行政等)との協力関係も得られたことから、国内外の比較研究を進める際、極めて有力な助言を得る体制となったこともある。 以上3点が計画以上に進展した理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
食品ロス削減の普遍的なモデル化を図るため、アジアと欧州の比較研究を進めたい。これまでの調査で台湾やオーストラリアなどの取り組みが活発化していることが分かり、予算配分を調整しながら、より多様な食品ロス対策の実情を調査したい。その結果、グローバルに進む各国の食品ロス対策を、1つのグローバルなシステムとして捉えながら、可能な範囲でモデル化を進め予定である。 ただし、食品ロス対策は、当初念頭にしていたスピードよりも遥かに早く進んでいる。特に英国では調査時までに10%の食品廃棄物削減を実現しているた。このような素早い取り組みをキャッチアップをするためには予算等の課題があるため、北米調査は今後の課題とし、欧州とアジアの動向を確実に把握しながら、暫定的にモデルを示すことを優先する。また、H30年度以降素早く研究活動に取り掛かれるよう、H29年度中に、本プロジェクトで残された課題を整理しながら研究をすすめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
英国調査における通訳・コーディネート料の280,007円(予定)の支払いをカードで行ったため、その決済日が平成29年度(4月3日)にずれ込んだため。 また、計画策定時(2014年秋)に比べ、やや円高傾向が強まったことから、その為替変動分による差異が発生したことも一因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、韓国調査を行う予定であったが、平成28年10月に学会で韓国を訪れる機会があり、その際に調査が完了した。そのため予定を変更し台湾の調査を実施する。また合算などで予算を調整できれば、オーストラリアの調査も検討する。
|