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2015 年度 実施状況報告書

長期不況下における沖縄農業の構造変動と農法変革に向けた研究

研究課題

研究課題/領域番号 15K07629
研究機関東京農工大学

研究代表者

新井 祥穂  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40345062)

研究分担者 山崎 亮一  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10305906)
永田 淳嗣  東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30218002)
大呂 興平  大分大学, 経済学部, 准教授 (50370622)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード農業構造 / 地域労働市場 / 就業構造 / サトウキビ / 沖縄
研究実績の概要

本研究課題では,地域労働市場の規定性から沖縄農業構造を明らかにすることを目的とし,方法としては,地域労働市場の展開度の異なる地域を選び,悉皆調査を通じて,農外就業と農業経営のあり方を析出する.27年度は,県内でも農外就業機会に恵まれた沖縄本島南部の一集落を取り上げた.
主要な知見は以下の通りである.

1.農家労働力の農外就業をみると,復帰前には米軍基地関連の不安定就業(「軍作業」など),地域内の建築日雇いへの従事に加えて,本土への「季節工」が主要な就業先であった.復帰後はその多様化が進んだ.現在,沖縄本島全域への通勤が可能である同地区では,公務員・教員などが賃金水準を構成しつつも,これと同程度の賃金・就業条件を享受する者が析出された.しかし太宗としては安定した就業条件を享受しているとはいえない(建設業雇用の減少,青壮年の賃金水準の低さ).それらと比較し農業,特に園芸ではそれより高い収入を実現することから,農業に傾斜する者が,青壮年においてもみられた.
2.農業では,園芸(レタス,キャベツ作)を中心に複合経営が組み立てられていた.レタスの流通経路は,復帰前の米軍基地需要への対応,復帰前後の農連市場出荷,続く本土出荷が増加する中での地域全般を巻き込む契約生産の開始とその終焉,その後の分化(農家を選抜しての契約生産の再結成/市場出荷/直売所など代替的流通経路の利用)と変遷していた.またレタスはサトウキビに比して農地を集約的に使う中で,彼らから放出された農地を集積するサトウキビ生産法人が成立していた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

27年度には研究計画に挙げた調査地域のうち,本島南部の一集落にて悉皆調査を実施し,上述のような成果が得られた.調査を通じて,離島部においてサトウキビの農地集積を進める生産組織の存在が明らかとなった.助成者らは,沖縄ではサトウキビでの経営規模拡大が生態環境の制約から困難とみていたのだが,彼らはその理解と一見矛盾する存在であり,その存立基盤の解明が待たれる.
27年度には,28年度以降に実施する悉皆調査地域で予察的調査を行う予定であったが,研究チームの日程調整が難航したため,この作業が28年度にずれ込んでいる.

今後の研究の推進方策

29年度以降,地域労働市場の展開度の異なる,多良間島,石垣島での悉皆調査を行うべく,28年度中に集落選定と現地との調整を行う.また27年度調査から得られた新たな課題として,サトウキビ生産組織の存立構造の解明があげられ,その調査を28年度に八重山離島で進める.具体的には,サトウキビ生産法人の機能・農地集積と,地域の農業構造に関する調査を行い,両者の連関ならびに今後の展開を論じる.

次年度使用額が生じた理由

27年度中に,28年度以降の事例調査の予定地域を訪問し,調査実施についての打ち合わせと予備調査を行う予定だったが,日程調整が進まず次年度にずれこんだ.

次年度使用額の使用計画

28年度には,多良間島,石垣島での悉皆調査地域の選定と現地との調整を行う.また27年度調査から明らかになった生産組織の調査を,八重山離島で進める.具体的には,サトウキビ生産法人の機能・農地集積と地域の農業構造に関する調査を行い,両者の連関を解明する.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (8件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 書評(細山隆夫著『農村構造と大規模水田作経営─北海道水田作の動き─』)2016

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 雑誌名

      農業経済研究

      巻: 87(4) ページ: 434-435

  • [雑誌論文] 茶不況期における熊本県の茶生産構造2015

    • 著者名/発表者名
      新井祥穂
    • 雑誌名

      不知火海・球磨川流域圏学会誌

      巻: 9(1) ページ: 37-46

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書評(矢口芳生 2013『農業多様性論』,および,矢口芳生 2013『共生農業システム論』農林統計出版)2015

    • 著者名/発表者名
      新井祥穂
    • 雑誌名

      共生社会システム学会

      巻: 9(1) ページ: 217-222

  • [雑誌論文] オーストラリア産wagyuの現状─日本への輸出可能性─2015

    • 著者名/発表者名
      大呂興平
    • 雑誌名

      農業と経済

      巻: 81(4) ページ: 71-81

  • [雑誌論文] 長崎県・壱岐の肉用牛繁殖経営における飼養管理作業の外部化-子牛受託施設(キャトルセンター)および繁殖牛受託施設(CBS)を中心に2015

    • 著者名/発表者名
      大呂興平
    • 雑誌名

      畜産の情報

      巻: 314 ページ: 24-38

  • [雑誌論文] EU向け和牛輸出1年目の到達点─パリの精肉店調査を中心に─2015

    • 著者名/発表者名
      大呂興平
    • 雑誌名

      畜産コンサルタント

      巻: 51(5) ページ: 20-25

  • [雑誌論文] オーストラリアのwagyu産業 ─和牛とwagyuの過去・現在・未来─2015

    • 著者名/発表者名
      大呂興平
    • 雑誌名

      地理

      巻: 60(8) ページ: 30-37

  • [雑誌論文] 沖縄県のさとうきび農業の構造変化への展望2015

    • 著者名/発表者名
      永田淳嗣
    • 雑誌名

      砂糖類・でん粉情報

      巻: 40 ページ: 51-55

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 座長解題2015

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 学会等名
      2015年度農業問題研究学会秋季大会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2015-11-07 – 2015-11-07
  • [学会発表] 農業生産法人の動向-長野県飯島町の土地利用型法人と機能-2015

    • 著者名/発表者名
      新井祥穂・山崎亮一
    • 学会等名
      2015年度農業問題研究学会秋季大会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2015-11-07 – 2015-11-07
  • [学会発表] 沖縄県のさとうきび農業の構造変化への展望2015

    • 著者名/発表者名
      永田淳嗣
    • 学会等名
      平成27年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会
    • 発表場所
      タイムスホール (沖縄県那覇市)
    • 年月日
      2015-10-22 – 2015-10-22
  • [学会発表] 食料安全保障:本源的蓄積からみた南南格差---山崎亮一著『グローバリゼーション下の農業構造動態--本源的蓄積の諸類型』を読み解く2015

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 学会等名
      第14回東アジア・フード・セキュリティー研究会
    • 発表場所
      東京農工大学
    • 年月日
      2015-05-23 – 2015-05-23
    • 招待講演
  • [図書] 農業経済学講義2016

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 総ページ数
      197
    • 出版者
      日本経済評論社
  • [図書] 2013-2015年度・科研費基盤研究(C)・25450318: 構造不況下における農業・農村の雇用創出研究: 研究報告・2013-2015年度2016

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一・細山隆夫・新井祥穂・ 成田拓未
    • 総ページ数
      63(山崎1-14,54-63,新井・山崎31-45)
    • 出版者
      東京農工大学農業経済学研究室

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公開日: 2017-01-06  

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