研究課題/領域番号 |
15K07637
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
栗田 匡相 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (60507896)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マダガスカル / 技術普及 / 米生産 / RCT / 行動経済学 / ミクロ計量経済 / アフリカ |
研究実績の概要 |
大別すると二つの点に集約される。一つは2014年8月に行われた調査の分析を行った点、今ひとつはこの分析結果を受けて、PAPRIz普及のためのRCTによる実証実験の事前調査を行った点である。 まず2014年調査の分析結果から述べる。第一に確認できたことはPAPRIzの持つ生産性向上の大きな効果である。政策評価によく用いられるPropensity Score Matchingなどの厳密な分析によって伝統農法と比較した際に、PAPRIzの反収は優れており、収益の点で見ても統計的にも有意な差が見られた。また、PAPRIzを採用した農家も増収の効果をよく理解しており、継続的にPAPRIzによる作付けを行っていることも確認できた。 しかし一方で、技術普及において課題となる3つの点が明らかになった。1点目は、田植えの方法が伝統農法とPAPRIzでは大きく異なるため、新技術を導入する際の心理的コストが高く、採用に踏み切れない農家が多くいたこと。2点目としては、導入に際して初期コストがかかるが担保などを保有していない信用制約下にある農家はPAPRIzを採用したくても出来ない現状があった。そして第3点目が、PAPRIz技術を導入したいという農家は多くいるもののそれらを学習する機会が限られているというものである。 以上の結果から、マダガスカルの農村において、PAPRIZが持つ潜在的な増産効果はかなり大きいものの、その成果は未だ限定的であることが明らかになった。 こうした成果を受けて、PAPRIz普及に向けた政策立案のために2016年6月よりRCTによる導入実験を行うが、その予備調査を2016年3月に行った。対象とした世帯はおよそ1200世帯ほどで、現在はこの予備調査の情報をもとに、政策を付与されるグループと付与されないグループの選定や実験に際して必要となる種子や肥料などの準備を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画の進捗自体は予定通り滞りなく行われているが、2014年8月調査、2016年3月調査での結果を受けて、研究代表者がPAPRIz入門導入パック(10アール程度の圃場に用いる肥料や種子を一つにまとめてガイドブックをつけた導入パック)というプランをPAPRIz側に提案したが、この提案にPAPRIzだけではなく、マダガスカル農業省、マイクロファイナンスを行っている民間の商業銀行などが大きな興味関心を持つこととなった。このため、PAPRIz側、また民間の商業銀行などからも積極的なサポートを得ることになり、当初想定していた規模よりも、より大きな規模で実証実験を行うこととなった(おおよそ500~600世帯程度)。また、当初はRCTを一度のみ行い、その成果をみるだけの予定であったが、継続的な使用のためにも、2016年度には、次回の作付け(2016年10~11月ぐらいから)にも同様の実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
期せずして、多方面から積極的な興味関心、サポート等を得ることになったため、対象となる地域や世帯を拡大し、RCTによる実証実験も複数回行うなど、より意義のある研究成果を生み出せるように対応していく予定である。
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