研究課題/領域番号 |
15K07637
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
栗田 匡相 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (60507896)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ネットワーク / マダガスカル / 農業生産性 / 技術普及 / 情報アクセス |
研究実績の概要 |
2016年度は、2回の調査を現地で行い、地理情報などを含む新たなデータを収集した。また、第27回国際開発学会全国大会では、それまでの調査結果を基にした報告を行った。途上国における農業生産性については同一の自然環境でも各農家世帯の間で大きな格差が生じることが通常である。こうした差異については農家個人、世帯の特性に由来するのは確かだが、市場の不完全性が前提となる途上国の農村経済では、情報面でのアクセスの差も大きな要因となっていることが近年の研究で明らかになっている。ただし、途上国農村において、とりわけサブサハラ地域のアフリカ諸国においては、こうした情報アクセスの格差は、テレビや新聞といったメディア、つまりはフォーマルな情報が限定的な状況の地域が多いため、隣人や親族といった社会ネットワークの関係性の差異が格差の大きな要因になっていることが分かってきた。こうしたネットワーク効果の影響を詳細な農家世帯調査データを用いて分析した研究は大変少ないため今後の研究の蓄積は非常に重要である。そこで本研究では、こうしたネットワークがもたらす生産性格差への効果について検証を行った。また、近年その研究蓄積が飛躍的に進んでいるネットワーク分析の分野では、ネットワークと一口に言ってもその質の差によってネットワークの効果そのものが異なることも明らかになってきている。このため、分析では、ネットワークの効果をその質によって分類し、それぞれの異なる影響についても議論を行った。分析の結果からはリスク回避、日常の会話を頻繁に行う人数(親族)、農業の相談をする人数(親族)などが、技術的非効率性を改善する要因となっていることが分かる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本プログラムの途中からマダガスカルにあるPAPRIZ事務所(農業技術の普及を目的に設立されている団体でJICAプロジェクト)との共同研究が始まったことで、本研究プログラムの申請時に想定していた以上の調査実施やデータの収集を行うことが出来ている。より具体的には、対象地域の拡大である。これまで調査を行った世帯数は2000世帯弱にも登り、また技術伝播のインパクトを測るための実験も想定を遙かに超えた規模で行うことが出来ている。今後もPAPRIZが終了する2020年まで共同で研究を進めることを念頭に、現在でも様々な議論を行っており、2017年度も申請時には予定をしていなかった2度の現地調査が入る予定である。2016年度には調査成果の報告も始まり、また現地JICA事務所、マダガスカル農業賞などとの共同研究、研究協力も進んでおり、想定以上の研究成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は最終年度であり、新規の調査のみならず、成果の発信に注力したい。既に予定されている報告としては、5月9日に、ブリュッセル自由大学での研究報告が予定されている。更には、7月の第2週にドイツのDIE(German Development Institute)での報告も予定されている。2017年の内に複数の報告を行い、年度末にはそれぞれのPaperをジャーナル投稿することに注力したい。また、2018年度以降もマダガスカルのPAPRIZ事務所、マダガスカル農業省との共同研究、研究協力を行うため、2018年度以降の進捗も見据えて、より発展的で継続的な実験や研究計画、実施を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した物品が予定よりも、安価であったため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
調査に必要な物品の購入に充当する。
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