研究課題/領域番号 |
15K07641
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
金山 素平 岩手大学, 農学部, 准教授 (60398104)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 盛土構造物 / 動態観測 / 圧密沈下予測 / ニューラルネットワーク / 変動係数 |
研究実績の概要 |
本研究では,観測初期の少ない実測値に基づく地盤圧密沈下予測法の構築を目的とし,ニューラルネットワークによる沈下予測手法を使用し盛土地盤沈下の予測を行い,モデルの改良とモデル内に導入する再学習規準値が予測精度に及ぼす影響について検討した. 沈下量比59%以下に相当する実測値を教師データとして使用した場合,改良前のネットワークモデルの予測値と実測値の間には明確な差異が確認でき,予測値の分散は経過時間の増加にともない大きくなる傾向を示した.一方,沈下量比69%以上の使用可能となる実測値が十分に増加した場合,予測した沈下量は実測値と良い一致を示し,予測値の分散は減少する傾向にあることが分かった. 観測初期の実測値を使用して長期間の沈下予測を精度良く行うため,比較的予測精度の高い短期予測値を教師データに取り込み教師データ数を増やすとともに,再びモデルに学習させ予測させることによって,モデルの予測精度の向上を検討した.学習に取り込む規準としては,予測値の変動係数に基づき,規準値は1.0,2.0および3.0%と設定した.その結果,改良したネットワークモデルの全ての予測値の分散は小さくなり,沈下量比35%においても予測値が実測値に近い値を示したことから,モデルの予測精度が向上することを確認した.再学習の許容規準値に関しては,低い規準値の場合沈下量を過小評価,高い場合過大評価する傾向にあるが,本研究で使用した1.0~3.0%の範囲内,特に2.0%程度であれば,精度の高い予測値が得られことが分かった. また,復旧復興の工事が行われている東北地方の三陸地域の現場管理および施工管理に貢献するため,宮城県亘理郡亘理町と岩手県陸前高田市小友地区の海岸堤防の動態観測をH27年7月より行っている.その動態観測と予測に関して,オランダデルフト工科大学および国内の学会にて講演し,情報交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の科研費交付金を使用してGPS測量機(ハンドヘルドGNSS受信機)を購入し,岩手県および宮城県の海岸堤防の動態観測を行うことができた.本研究成果を,先行して行っていた過去のデータとともにまとめ現在論文を投稿中である.また,国内学会における講演および国外の大学研究者との情報交換を行ったことから,順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
室内における模型実験を岩手大学にて実施する.圧密試験を行い,観測したデータを用いて予測精度および適用性について検討を行う.それと並行して,国内外,とりわけ東北地域の現場沈下観測データを入手し,本予測手法の汎用性を検証する.現場観測データの入手が困難である場合は,過去に報告された論文および報告書等から著者の了承を得て,本研究に資料データを使用することを想定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在投稿中である研究成果をまとめた論文の投稿料の支払いが次年度へずれこんだため.
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次年度使用額の使用計画 |
論文投稿料の支払いと翌年度分として請求する助成金と合わせ,ポスト処理ソフトウェアの購入,GPS処理ソフトウェアの更新料を予定している.
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