滞在型市民農園(以下,KG)は近年,競争期を過ぎ,安定的に利用者を獲得できる事例と,それに苦戦する事例とに二極化しつつある。特に苦戦している事例は施設の存続が危ぶまれる。本研究は二極化の要因が開設当初の計画およびその後の管理・運営にあると考え,その究明を目的とする。具体的には,苦戦している事例に対する悉皆的な調査を通じて,①現状および過去から今日までの変化を把握する。②開設計画を検証する。前例踏襲ゆえに地域性に見合った区画数や施設規模,管理運営計画が為されなかったとの仮説に基づく。③空き区画がある中での管理・運営状況について把握する。その他,跡地利用や移住促進施設としての可能性についても検討する。 平成27年度は,空き区画が特に多い事例の数地区に現地調査に行き,その現状把握および要因検討に努めた。複数の事例に共通的に見られたのが,①行政担当者の異動に伴い,過去の情報が十分に引き継がれておらず,それゆえに空き区画に対する問題意識が必ずしも高くないこと,②問題意識を持った行政職員がブログの開設やビラの配布などにより宣伝を行っている事例は見られるが,宣伝を行った当初には区画は埋まるもののまた数年のうちに空き区画が再発生すること,すなわち空き区画が発生しやすい要因はやや恒久的なものであり,宣伝による穴埋めも一時的なものに過ぎないこと,③年間利用ではなく短期的な貸与を模索している事例も増えつつあるが,空き区画を一時的に防いでいる程度の成果しか見られないこと,④周辺にあるKGのうち,特に報道に乗りやすいなどの理由で著名な事例との間での競合が明確に生じていること,などが見て取れた。ただし利用料や立地,施設規模などに関する一律な要因は現時点までに見られておらず,その点の精査が今後の課題である。
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